『TRYADHVAN』 古賀絵里子著

レビュー

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TRYADHVAN

『TRYADHVAN』

出版社
赤々舎
ISBN
9784865410556
発売日
2016/10/21
価格
6,480円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『TRYADHVAN』 古賀絵里子著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 黄色い紐綴(ひもと)じの本書を見つけた時、なぜか心がざわめいた。タイトルは何と読むのだろう。どうやらお寺を舞台にしたモノクロームの写真集のようだ。しかし、どのページも僕の視線をとらえて離さない。やがて赤ちゃんが産(う)まれる。最後までページを繰って、写真家がこの子どもの母で、このお寺の住職が夫らしいことに気がついた。

 題名のTRYADHVAN(トリャドヴァン)とはサンスクリット語で、過去世、現在世、未来世の「三世(さんぜ)」を表す仏教用語であるらしい。何げないお寺の日常を淡々と切り取るようにみえて、その実、写真家の眼差(まなざ)しは三世の家族の絆と生、性、聖の不可思議な繋(つな)がりをしっかりと見据えている。それがこの写真集の強靱(きょうじん)な引力となっている。

 優しく絡み合った裸の二人の手から始まる写真集は、冬の川の流れで終わる。三世の輪廻(りんね)転生が見事に構成されている。

 赤々舎 6000円

読売新聞
2017年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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