【聞きたい。】荒木源さん『大脱走』

インタビュー

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大脱走

『大脱走』

著者
荒木 源 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784094063929
発売日
2017/02/07
価格
724円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】荒木源さん『大脱走』

[文] 産経新聞社


荒木源さん

■ブラック企業への対抗手段

 デビューから足かけ14年で8作。寡作家だが、うち3作が映画化とこちらは高打率だ。最近作は女優、杏の映画初主演作「オケ老人!」(細川徹監督)。ほかに「探検隊の栄光」(藤原竜也主演、山本透監督)、「ちょんまげぷりん」(錦戸亮主演、中村義洋監督)。

 「分かりやすい小説が多いから映像化しやすいのでしょう」と自身は分析する。

 「分かりやすい」というのは、デビュー作の『骨ん中』(平成15年)をのぞいてコメディータッチの作品であることが大きい。

 小説に専念するため勤めを辞めたが、外で働く妻に代わって家を守る「主夫」にもなった。初作は8年間の新聞記者生活から材をとったが、その後の作品は主夫の日常から生まれた。その違いだという。家事の合間に執筆するので、寡作になったともいえる。

 『大脱走』は、ブラック企業に就職してしまったヒロイン、片桐いずみの奮闘を、これもコメディータッチで描く。27年に出した単行本を、春の新生活を控えて文庫化。

 「あらゆることからすぐに逃げ出す、頼りない後輩社員、俵真之介が真の主人公だから『大脱走』」

 この俵、「息子がモデル」だというから、この作品も自身の日常を素材に書き始めた。

 「息子はしんどいことからは必ず逃げだす。歯がゆかったけれど、こういう生き方もありかと思い始めました。のらりくらりと何事もかわす性質は、あるいはブラック企業への対抗手段になるかもしれない」

 その息子も高校を卒業。これを機に「主夫卒業」を宣言する。家事のため自制してきた取材活動にも取り組みはじめた。初夏に出る予定の新作は、国際テロ事件に直面した日本政府が右往左往する姿を描く社会派作品になる。

 「普通の人の30~40代の仕事の配分が8なら、自分は3ぐらいでした。これから仕事8の生活をしてみたい。50歳を超えて体力がついてくるか、楽しみでもあり、不安でもあります」(小学館文庫・670円+税)(石井健)

  ◇

【プロフィル】荒木源

 あらき・げん 昭和39年、京都府生まれ。作家。平成15年『骨ん中』でデビュー。

産経新聞
2017年2月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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