絵本のスタンダード 「憲法くん」で読み聞かせ

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憲法くん

『憲法くん』

著者
松元 ヒロ [著]/武田 美穂 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784061333093
発売日
2016/12/16
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

お孫さんに読み聞かせを。ちょっとドキリの憲法絵本

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 ここは是非お孫さんに買う手でしょう。そして「読み聞かせ」をするのです。可愛いお孫さんにそれとなく憲法を教えるなんてカッコイイと思いませんか。

〈こんにちは、憲法(けんぽう)くんです。姓(せい)は「日本国(にほんこく)」名(な)は「憲法(けんぽう)」、「日本国憲法(にほんこくけんぽう)」です。すこし、とっつきにくい名(な)前(まえ)ですね。だから、ともだちみたいに「憲法(けんぽう)くん」とよんでください〉とこの絵本は始まります。

 本書は作者の松元ヒロ氏が二十年に亘って舞台にかけているひとり芝居の持ちネタ「憲法くん」に、そのファンである絵本作家の武田美穂氏が惚れ込んで出来上がった合作の絵本です。語りかけるような優しい文体と、ますだくんシリーズで知られる可愛い絵で進行しますが、ドキリとする絵もあります。

 そこには焼け跡に佇む憲法くんの後姿と、ガレキの上にポツンと腰かけ、途方に暮れる一人のオカッパ頭の少女が描かれています。この一枚の絵が饒舌に語るもの、これこそが「憲法くん」の真骨頂ではないでしょうか。

 憲法の前文も紹介されています。ここも松元ヒロ氏の得意とするところです。故井上ひさし氏に「ヒロさんが語る前文からは、とても深い思想を感じました」と褒められたそうです。「どこか英語やフランス語の韻文のような美しさがある」とも。

 しかし前文は子供さんには少し難しいかもしれません。耳に心地いい韻を頼りに何度か読み聞かせをしてください。そして何が書かれているかを噛みくだいて話してみてください。子供さんはきっとこの「憲法くん」に馴染むはずです。

 子供さんが自ら絵本を買うことはまずありません。学校や図書館で手に取り、気に入ったものを親や祖父母が買い与えるのが普通です。本書は憲法絵本のスタンダードになる気がします。家族の末長い笑顔のためにも買い与え、読み聞かせすることをお勧めします。両者の恰好の橋渡しになるはずです。

新潮社 週刊新潮
2017年2月9日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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