『首折り男のための協奏曲』
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伊坂の技巧が冴え渡る一冊
[レビュアー] 図書新聞
タイトルは比喩ではなく、本当に首を折る男が出没しながら、緩やかにつながる七つの短編を収録した作品集。人気作家となった伊坂の技巧が冴え渡る一冊。何かを描写するということは、何かを描写しないということとセットであるが、伊坂の選択は全く必然的で、恣意性がきれいに消去されている。先に「技巧」と書いたが、それはひけらかしとは映らない。飽くまでも読後に結果として見出されるばかりだ。そんな伊坂の凄さを端的に味わわせてくれるのは「月曜日から逃げろ」だろう。この短編について、解説の福永信は「ラストで衝撃を受けて、私は椅子から落ちた者である」と書いているが、物語の必然性とアクロバティックな手法の、これほど幸せなマリアージュはそう滅多に見られるものではない。(12・1刊、四三八頁・本体六七〇円・新潮文庫)