“ダーウィン後”の生物学 進化の謎に人類はどこまで迫ったか

レビュー

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本格派入門書の波が来ている!

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 生物の多様性は、人間の興味を引きつけてやまない。動物、植物、菌類などの色や形、生存戦略などは、魅力的な謎の宝庫である。

 ダーウィンの進化論は有名だが、その後の生物学や遺伝学はどんな知見を得ているのだろうか。小原嘉明『入門!進化生物学』は、一つ一つの小さなトリビアを楽しく読み進めるうちに、進化の謎に人類はどこまで迫ったかを理解できるしくみになっている。

 まずは、餌の種類によってくちばしの形態が異なる鳥や、生殖競争に勝つには大きさや強さを競うだけではない第二の方法がある魚などの具体例を見ながら、遺伝子はどのように淘汰されるのかを考える。次いで、ダーウィンの「自然淘汰説」の勘所を手際よくおさらいし、この説だけでは説明できない現象へと目を転じる。人類が新しく手にした「ゲノム解析」という技術は、遺伝子が自然淘汰されるだけではなく、ほかの驚くべきルートでも変化していくことを明らかにした。自然淘汰を「すり抜ける」遺伝子の存在に着目した、遺伝生物学の新たな有望株「中立説」についての解説は、まだまだ読み足りないと思うほどおもしろい。一冊で、進化研究の「これまでのあらすじ」がわかる。

 読み物としての上質さと知的興奮が両立することが、よい新書の条件の一つ。ここ数年、中公やちくまなどのレーベルは、再び本格派の入門書に回帰してきている。時が経っても色あせない教養にふれ、たっぷり楽しむチャンスです。

新潮社 週刊新潮
2017年2月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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