苦手意識を捨てよう。電話応対のコツとマナーとは?

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苦手意識を捨てよう。電話応対のコツとマナーとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

仕事の基本とマナーで面白いほど評価が上がる本』(澤野 弘監修、井手奈津子著、あさ出版)は、ビジネスに関するさまざまな基本をわかりやすく示す「ビジネスベーシック『超解』シリーズ」の第7弾。今回は時流とともに変遷する「仕事の基本」「ビジネスマナー」に焦点を絞り、厳選された約40のテーマについて解説しています。

監修者は、「人財教育」を実施しているNPO法人の代表。エアライン・ホテル・旅行・ブライダルなどの接客サービスが求められる業界の研修をはじめ、一般企業の社員研修、ビジネスマナー教育や接客サービスマナー検定なども行っているそうです。そして著者は、毎年180日間以上の登壇実績を持つという研修講師、キャリアコンサルタント。本書には、そんな両者のノウハウが生かされているわけです。

好印象な人、仕事をうまく進める人、まわりと良好な人間関係を築ける人には、ある共通点があると確信しています。それは、知識や能力だけでなく、ビジネスマナーを身に付けている、ということです。相手への思いやりの気持ちを、ビジネスマナーという手段を使って、さりげなく、自然に表現しているのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、正しい敬語、電話応対、訪問の仕方などのビジネスマナーの基本はもちろん、「なぜそのマナーが必要なのか」「実行することでどんな効果があるのか」についても具体的に解説しているわけです。きょうはそのなかから、第3章「電話応対での常識」に注目してみたいと思います。

応対の基本と大切な心がまえ

「電話が苦手で…」という方も少なくないでしょうが、電話に対する苦手意識を払拭するためには、まず「電話を取ることで、得られるものはなにか」について考えてみるべきだと著者は記しています。

たとえば、ちょっと考えてみても「取引先を覚える(覚えてもらえる)」「他の方がどんな仕事をしているのかがわかる」「日ごろ、話す機会がない方ともコミュニケーションが生まれる」などを思いつくことができますが、他にもメリットはまだまだあるはず。

いずれにしても、電話応対は情報の宝庫。電話を取る数に比例して知識が増していき、仕事を覚えることにもつながるという考え方なのです。だとすれば、「コールが鳴ったらチャンス」と考えることによって、気分を少しだけ変えることもできるかもしれません。

ただし電話には「声だけが頼り」「コスト(料金・時間)がかかる」「相手の姿や状況が見えない」といった特性があるだけに、対面以上に声のトーンや言葉づかいが重要。しかも態度は声に表れるものなので、目の前に相手がいるように話すことがポイントだといいます。また、電話に出るすべての方が、組織の代表であるという意識を持つことも大切。

ところで著者は電話応対の研修で、「私、滑舌が悪くて…」というような話をよく聞くそうです。いうまでもなく滑舌とは、話すときの滑らかさ。そして滑舌をよくするために必要なのは、継続的な練習。その証拠に、毎日、朝礼で早口言葉を唱和している企業もあるそうで、結果として、社員全員がはっきりわかりやすく話すようになったのだとか。そんなこともあり、ここでも、いくつかの早口言葉が紹介されています。

・お綾や お母上に お謝りなさい
・ジャズ歌手シャンソン歌手 新人シャンソン歌手の新春シャンソンショー
・特許を 許可する 東京都 特許許可局
・青巻紙 赤巻紙 黄巻紙 長巻紙 巻巻紙 紙巻紙
(46ページより)

はじめは明瞭に発音することを意識し、慣れたら徐々にスピードアップ。姿勢を正し、笑顔で練習することがポイントだといいます。(44ページより)

受け方・取り次ぎ方・かけ方の基本

近年は、電話に出る際、「3コール以内に出る」ことが多くの組織の基準になっているとか。1コールはおよそ3秒なので、3コールだと約9秒。つまり、「10秒以内に出ましょう」ということです。

電話をかける側は、相手が10秒以上も出なければ「どうしたんだろう」と感じるもの。それどころか、なかにはコール数が増すごとに不安やいら立ちを感じる人もいるでしょう。そこで3コール以上の場合は「お待たせいたしました」、5コール以上なら「大変お待たせいたしました」といいながら、言葉に気持ちを込めて電話に出るべき。

なお電話応対では、最初と最後の印象が、その電話すべての印象を決めるといっても過言ではないそうです。具体的にいえば最初とは、「名乗り、挨拶、相手の確認」まで。最後とは「最後の挨拶、名乗り、電話の切り方」。

著者は多くの電話をモニタリングしてきたそうですが、最初の名乗り、組織名、自分の名前を、早口で流す方が非常に多いと指摘しています。これは、毎日のように口に出していることなので、知らず知らずのうちに機械的になってしまうから。しかし相手は「間違いなくかかったか」を確認したいわけですから、聞き取れない名乗りと挨拶は不快感を与えることになってしまうのです。

そして、電話を切ったあとに残る余韻となり、すべての(組織の)印象につながるのが最後の部分。だからこそ、最初と最後を、はっきり、ゆっくり、ていねいに。まずは、ここを意識して電話に出ることを心がけるといいそうです。(48ページより)

相手の意向を確認する

たとえば、外出中の先輩である田中さん宛てに取引先から電話がかかってきたとします。その際、「申し訳ございません。田中は外出しております。戻りましたら折り返しご連絡しますので、お電話番号をお願いします」と答えたとしたら、親切な応対だといえるでしょうか? この問いに対して著者は、「決してバツではないけれども、一方的」だとしています。また、もしかしたら相手が、折り返しの電話を望んでいない可能性も考えられるでしょう。

そこで、こういう場合は「よろしければ、折り返しいたしましょうか?」「どのようにいたしましょうか?」と相手の意向を確認し、それに合わせて応対することが大切。名指し人が不在の場合は、必ず相手の意向を確認する。ここが重要だそうです。

また、聞き間違いを防止するため、承った電話番号や伝言は、「復唱いたします」とひとこと添え、必ず復唱すること。聞き間違いの防止になるわけですが、相手に伝わった安心感を与えることにもつながり、会話のキャッチボールがたくさん生まれる効果もあるというのです。顔が見えない相手だからこそ、対話が大切だということです。(50ページより)

ビジネス電話でよく使う表現

新人の方から「どうすればスラスラと話せますか?」と質問を受けた際、著者は「丸暗記でもいいのでフレーズで覚えること」「声に出して練習すること」とアドバイスしているのだそうです。自分のなかに入っていない言葉は、本番で出てこないもの。そこで本番のためにも、棒読みではなく、気持ちを込めて繰り返し練習することが大切だという考え方です。

不在理由にもよるでしょうが、名指し人が不在の場合は相手に「どこまで伝えるか」が重要。場合によっては、社内の状況を外部に漏らすことにもなりかねないからです

たとえば著者が知っているケースでも、ある若手社員が親切心で「営業の△△は○○県に出張しております」と相手に伝えたところ、先方の声のトーンが明らかに下がったことがあったのだそうです。というのも○○県は、相手のライバル社の本社がある県だったから(事実、営業の△△さんは、そのライバル社に出張していたのだといいます)。

名指し人が不在の場合、相手が知りたいのは、名指し人がどこに行っていて、何をしているのかではなく、「いつ戻るのか」「(緊急の場合)どうすれば確認が取れるのか」です。伝えるのはこの部分です。
(57ページより)

会議中、昼休憩などと伝えなくても、「席を外している」「外出」で十分なこともあるということです。(56ページより)

具体的でわかりやすく、しかも無駄なことは書かれていないため、必要なことだけをスムーズに知ることができる内容。手の届くところに置いておけば、すぐに基本を再確認したいときなどに役立ちそうです。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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