グローバル化時代の行方を刻印する沖縄のリアル

レビュー

4
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消えゆく沖縄

『消えゆく沖縄』

著者
仲村清司 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784334039530
発売日
2016/11/17
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

グローバル化時代の行方を刻印する沖縄のリアル

[レビュアー] キリスト新聞社

 「沖縄にルーツがありながら、沖縄が本土復帰するまでは『在日二世』として内地で暮らし、その後、『在沖二世』となった僕はアイデンティティがあやふやで、それゆえ二つの足場を交錯させながら物事を考える性質がある」

 最新最良の「沖縄」入門書。一色哲氏が『福音と世界』(新教出版社)で連載した「南島キリスト教史入門――奄美・沖縄・宮古・八重山の近代とキリスト教」を学び続け、考えるためには必須の副読本だ。

 全6章構成の前半は、観光開発のために観光資源である「文化と自然」を破壊する沖縄の現在への「戸惑い」に始まる。「失われゆく風景」が著者の大阪時代と重ねられつつ語られ、移住20年で得た友人の死を通して移住者の揺らぎと「溝」が明らかになる。

 後半は沖縄内部での「葛藤」からオール沖縄に至る「民意」の記述。終章「信仰」からエピローグに至る筆致は、グローバル化時代の宗教の行方を鮮やかに刻印する。

 「変質してしまったこの島への遺言」と銘打つ帯に偽りはない。「沖縄」の持つ多様な側面が、人生をかけて島の裏表と向き合ってきた著者の煩悶から、その陰影が立体化する。南の島の楽園、基地問題でやかましい政治化した島というレッテルにはない「沖縄のリアル」が透徹した目線で描かれる。足が地についているからこそ紡ぎ出せる声。

 「沖縄ブームと移住ブームに火をつけた人間で、そのブームが辺野古の問題を覆い隠してしまった。あなたこそ沖縄に犠牲を押し付けてきた本土の政治的責任を曖昧にした張本人」。著者が受けた批判の一つである。沖縄の難しさが滲むが、希望は著者のような書き手がいることにある。

キリスト新聞
「Ministry(ミニストリー)」2017年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

キリスト新聞社

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