宮部みゆきのこの短篇がスゴイ! その2――作家生活30周年記念・特別編

レビュー

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チヨ子

『チヨ子』

著者
宮部, みゆき, 1960-
出版社
光文社
ISBN
9784334749699
価格
523円(税込)

書籍情報:openBD

宮部みゆきのこの短篇がスゴイ! その2――作家生活30周年記念・特別編

[レビュアー] 佐藤誠一郎(編集者)

 今年、作家の宮部みゆきさんが、作家生活30周年を迎えられます。この記念すべきメモリアルイヤーに、宮部みゆきさんの単行本未収録エッセイやインタビュー、対談などを、年間を通じて掲載していきます。今回は特別編として新潮社で宮部みゆきさんを担当して25年の編集者で、新潮講座の人気講師でもある佐藤誠一郎が数ある名短編の中から選りすぐりの作品を紹介します。

 ***

 第二回めの今回は「雪娘」です。

 2011年に刊行された『チヨ子』(光文社文庫)という短編集の中の一編。この短編集は、連作もの以外では15年ぶりという貴重な文庫オリジナルなのです。

 ジャンルから言えばホラー&ファンタジー系。所属する作家事務所主催の朗読会で、宮部さん自身がウサギの着ぐるみを着て朗読した「チヨ子」という表題作も収録されています。解説のページにそのときの写真も載っていて、ファン必携の一冊!

 さて「雪娘」ですが――

 小学校の同級生が、卒業してから二十年ぶりに居酒屋に集まった。みんな三十過ぎの結構な歳になっている。その宴会で、12歳当時に殺されて雪の中で発見されたユキコという少女のことが話題に上ります。犯人の捕まらない未解決事件の被害者です。会話のボリュームが少し下がってくる。折しも外は雪がちらついている。ちょうどそのとき、赤い靴をはいた女の子が店の戸口に立った、らしい……。主人公の「私」にはどうやら犯人の見当がついている、らしい……。

 最後に明かされる犯人が誰なのかは、もちろん読んでいただくしかありませんね。
 この悲しくも美しいゴーストストーリーの結末の姿を目にすると、宮部さん作品のイメージが、少し変わるかも……。

Book Bang編集部
2017年3月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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