名作揃い「降旗作品」と“全身俳優”高倉健の実像

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名作揃い「降旗作品」と“全身俳優”高倉健の実像

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 高倉健が主演したテレビドラマは、わずか4本しかない。『あにき』(TBS系、77年)はその中の1本で、ドラマ初主演作でもある。何代も続くとび職「神山組」の頭、神山栄次を演じた。この時、脚本の倉本聰は、高倉健という俳優がセリフで感情を表現するタイプではなく、セリフをしゃべらなくてもいろいろなものを表現できる人だとわかった。

 主演・高倉健、監督・降旗康男という組み合わせでの第一作が、映画『冬の華』(78年)だ。その脚本を、倉本は高倉への私的ラブレターのつもりで書いた。その後、高倉と降旗は何本もの作品を生み出していく。

 同じ倉本脚本の『駅 STATION』(81年)。山口瞳原作の『居酒屋兆治』(83年)。俳優・ビートたけしが光った『夜叉』(85年)。元野球選手の板東英二を起用した『あ・うん』(89年)。「日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞、「ブルーリボン賞」主演男優賞を受賞した『鉄道員(ぽっぽや)』(99年)。田中裕子と共演した『ホタル』(01年)。そして、最後の主演作品となった『あなたへ』(12年)である。

 著者はこれらの作品の制作過程を追いながら、関係者への取材をもとに“全身俳優”の実像を探っていく。たとえば、高倉は本番で何をやるかわからない。テストもやらない。段取りの確認はしても、本気の芝居は本番まで見せない。撮影の木村大作が、その一発勝負を撮り逃さないことを知っていたからだ。

 また役柄であっても、自分自身が許せないキャラクターを演じることを拒否した。脚本、もしくは原作にあるキャラクターが「自分のなかにストンと入ってこないと駄目」なのだ。映画の残像や映像、演じた人間性などが年輪のように積み重なり、「高倉健」が出来上がったのかもしれないと著者は言う。

 タイトルの「立ち姿」は、いわば高倉の象徴だ。立っている後ろ姿だけで、今も観る者を引きつける。

新潮社 週刊新潮
2017年2月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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