『21世紀の「中華」』 川島真著

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21世紀の「中華」 : 習近平中国と東アジア

『21世紀の「中華」 : 習近平中国と東アジア』

著者
川島 真 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784120049064
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『21世紀の「中華」』 川島真著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

日中和解の方策を考察

 中国は今どのように動いているのか。今後どこに行くのか。そもそも中国とは何なのか。どのように対峙(たいじ)すべきなのか。本書は、中国外交史研究の第一人者が、こうした問題に真正面から取り組んだ時論集である。2012~16年に『中央公論』や『nippon.com』などに発表された論考がもとになっている。

 2012年は、習近平政権が発足した年であった。当時は、国内では集団指導体制、対外的には協調的政策が継続するのではないかという観測も多かったが、国内の権力基盤が確立したと見られる13年末頃から、強硬な外交姿勢が目立つようになった。今や中国は、主権や安全保障の領域では妥協しない姿勢を鮮明にしている。他方で、既存の世界秩序を破壊する気はなく、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの国際公共財を提供し、東南アジアとの地域協力を重視する姿勢も見せている。本書は、この間の中国の動きを追ったいわば定点観測であり、香港、台湾を含む「中華」世界の変容をリアルに浮かび上がらせている。

 さまざまな「チャイナ・リスク」が存在するが、日本にとって最大のリスクの一つは、歴史認識問題であろう。著者は、日中歴史共同研究や戦後70年談話の作成にかかわった経験を踏まえ、今後の日中和解の方策について考察している。この問題に対処する上で、対外広報が重要であることも訴えている。領土問題などの争点ばかりでなく、日本の「日常」を発信すること、海外の「日本研究」を戦略的に支援強化すること、「親日派」ではなく「知日派」を育成することなど、具体的・説得的な提言がなされている。

 著者は、「今後どのような変化が日中間に生じても驚くに値しない」とし、「さまざまな可能性を想定しておく必要」があると指摘している。本書には、そのためのヒントが数多くちりばめられている。東アジアの将来に関心を持つ全ての人に読んで欲しい力作である。

 ◇かわしま・しん=1968年、神奈川県生まれ。東大教授。専門は国際関係史。著書に『中国近代外交の形成』など。

 中央公論新社 2000円

読売新聞
2017年2月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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