【話題の本】『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一著

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【話題の本】『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』呉座勇一著

[レビュアー] 産経新聞社

■硬い「室町もの」が異例の大ヒット

 室町時代から戦国時代への転換点として名高い応仁の乱。全国の大名を巻き込んで11年も続いた大事件ながら、あまりにややこしい経緯のためか、歴史的重要性の割に詳しい内容が知られていない。

 この大乱に挑む著者は、国際日本文化研究センター助教で新進気鋭の中世史家。2つの大名連合の勢力争いを中心に、多数の参加者の間で合従連衡が繰り返された複雑な戦争を描くにあたり、本書は同時代を生きた奈良・興福寺の高僧2人の日記に視点を置く。一定の観測点から叙述するという技を使うことで、高い学問的水準と読みやすさを両立させている。

 中央公論新社によると、昨年10月に初版1万3000部でスタートし現在13刷18万部。硬い歴史書としては異例の好調だ。担当の並木光晴さんも「室町ものは(戦国や幕末と比べ)人気がないというのが業界の常識だが、知りたいという潜在的ニーズはあったのだろう。全く予想外のヒットだ」と驚く。

 乱の当事者たちはそれぞれに最善手を模索したが、見通しの甘さや錯誤が重なった結果、不毛な戦争はだらだらと続いた。その混乱を愚行として後知恵で裁くのではなく、当事者目線で追体験させようとする意欲作だ。(中公新書・900円+税)

産経新聞
2017年2月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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