『さよなら、カルト村。』 高田かや著

レビュー

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さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

『さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで』

著者
高田 かや [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163905952
発売日
2017/01/30
価格
1,080円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『さよなら、カルト村。』 高田かや著

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

 閉ざされた環境から、どうやって人は歩み出ることができるようになるのか。前作『カルト村で生まれました。』で、農業をなりわいとするコミューンに生まれ育った経験を、コミックエッセイに綴(つづ)った著者の第二作である。今度は中学時代から、高校卒業にあたる年齢で「村」を出るまでを扱っている。

 「カルト」という、ぎょっとするようなタイトルとは異なって、農作業と集団生活を楽しむようすも、ほのぼのと描かれている。「村」に愛着をもつ人たちの選択も、彼ら彼女らがめざす幸福の形だ。そんな風に著者が柔らかく受けとめているからだろう。その描写のあいまに、マインドコントロールや理不尽な管理のしくみに対する、冷静な視線が顔をのぞかせる。

 「村」から自立した考えを著者がしだいに持つようになるのを助けたのは、読書である。「村」では禁止されている本を、中学校の図書室を通じて大量に読み、自分一人の世界を思い描けるようになった。精神の独立を支えるものとしての書物の恵み。それをここまで強く実感させる本は、現代では珍しい。

 文芸春秋 1000円

読売新聞
2017年2月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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