『思想戦 大日本帝国のプロパガンダ』 バラク・クシュナー著

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思想戦 大日本帝国のプロパガンダ

『思想戦 大日本帝国のプロパガンダ』

著者
バラク・クシュナー [著]/井形 彬 [訳]
出版社
明石書店
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784750344362
発売日
2016/12/25
価格
3,996円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『思想戦 大日本帝国のプロパガンダ』 バラク・クシュナー著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 本書は、戦時下に日本が行ったプロパガンダ(宣伝や広報活動)に関する学術書である。一般に、ナチス・ドイツなどに比べ、日本のプロパガンダは拙劣であったと見られることが多い。しかし著者は、日本政府は少なくとも対内的プロパガンダには成功しており、それゆえに長期間大規模な軍事行動を継続できたのだと論じている。

 著者が特に強調するのは、日本社会の中に、政府のプロパガンダを積極的に受容・拡大する動きが存在していたことである。民間プロパガンダ会社の活動、中国に派遣された演芸人慰問部隊「わらわし隊」の経験など、本書の考察対象は広い。近年、プロパガンダが国家と社会の相互作用によって生まれるということは通説的理解となっているが、本書はそれを具体的に跡付けることに成功している。

 戦時中にプロパガンダに関わった多くの専門家や組織が、終戦後は占領軍に協力し、戦後のメディアや広告業界にも影響力を残したという。日本を戦争に駆り立てた社会構造やメディアのあり方、戦争責任問題について、考えさせられる指摘が多い。井形彬訳。

 明石書店 3700円

読売新聞
2017年2月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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