「ぼくは、人を殺してみたい」。スクールカウンセラーの奥貫千早に男子高校生が告白する。同じ頃、その地域に女子高生3人に乱暴の限りを働き、刑期を終えた男が住んでいることが分かる。
社会はどこまで他人を受け入れられるのか、それが罪を犯した者、もしくは殺人衝動を持っている者だとしても可能なのか。
社会が抱える「悪」に直面したときの“いい人”の対応が、きれいごとではなく描かれる。排除か、隔離か、それとも…。学校で家庭で地域で、千早は葛藤する。
その千早にも影の部分が見え隠れするのが、物語に深みを与える。(講談社、1600円+税)

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2017年2月26日 掲載
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