『アブサンの文化史』 バーナビー・コンラッド三世著

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アブサンの文化史: 禁断の酒の二百年

『アブサンの文化史: 禁断の酒の二百年』

著者
バーナビー・コンラッド三世 [著]/浜本隆三 [訳]
出版社
白水社
ISBN
9784560095294
発売日
2016/12/28
価格
3,024円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『アブサンの文化史』 バーナビー・コンラッド三世著

[レビュアー] 塚谷裕一(植物学者・東京大教授)

 ヴェルレーヌ、ランボー、オスカー・ワイルド、ロートレック、ファン・ゴッホ。

 さまざまな芸術作品、特に十九世紀末の作品に頻繁に登場する酒・アブサン。しかし「緑の妖精」ともいうこの酒の味を知る人はほとんどいない。それもそのはず、精神を蝕(むしば)み健康に有害であるとして一九一五年にフランスで禁止された。現在出回っているものは原材料の一つ、ニガヨモギに由来して有害成分とされるツヨン(ツジョン)の含有量を抑えた、オリジナルとは別のタイプのものである。

 本書は、その「緑の妖精」がどれほど人々を耽溺(たんでき)させたかを、豊富な資料に基づき紹介する。芸術家たちの飲みっぷりを見ていくと、有害成分はツヨンではなくアルコールそのものだったのではないかと思われてくるが、ともあれこの緑の妖精が、いかに多くの芸術家たちを翻弄したか、その事例の多さに驚かされる。残念ながらあまり読みやすい訳ではなく、ニガヨモギが属するキク科の種数が百八十種とされるなど(日本産だけで四百種を超える)、間違いも散見されるが、絵画作品群の紹介は注目に値する。浜本隆三訳。(白水社、2800円)

読売新聞
2017年2月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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