【写真集】『天國へ』荒木経惟著
[レビュアー] 産経新聞社
■原節子、水木しげるらの死
ドキッとするようなタイトルだが、「テンゴク」ではなく「テンクニ」と読ませるらしい。著者直筆の前書きには「NHK日曜美術館の録画で青山墓地をクルマド写した後、ラストシーンを銀座歩行者天國でと4丁目で収録されて、うちあげを7丁目の天ぷらや『天國』で」とある。
272ページのうち、文章はこの1カ所だけで、後はおびただしい数の写真が大小さまざまなサイズで並ぶ。ワイズ出版が手がける「写狂老人日記」シリーズの第18弾に当たり、一昨年の8月16日から昨年2月22日までの日記を写真でつづっている。
おなじみのエロスに静物、雲ととらえる対象はさまざまだが、中で目につくのが、原節子や水木しげるら著名人の死去を伝える新聞記事やテレビ画面のショットだ。ワイズ出版によると、平成20年に前立腺がんと分かって以降、タイトルも「東京ホーシャセン」「命日」など、病気や死を連想させるものが多いという。
「一方で、墨で書いたタイトルの文字は刺激的なほど迫力があるし、ものすごい数の写真を撮っている。今年中にあと2冊は出すかもしれません」とワイズ出版では話している。(ワイズ出版・3800円+税)
藤井克郎