「うんこ」と向き合えば生き方が変わる?本 『タイムマシンで戻りたい』ほか

レビュー

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  • タイムマシンで戻りたい
  • そして生活はつづく
  • くう・ねる・のぐそ

書籍情報:版元ドットコム

「うんこ」と向き合い生き方が変わる?本

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

 とあるデータによると、赤ちゃんが初めて覚える言葉は「まんま(ごはん)」だそうだ。しかし食事をすれば当然、排泄も伴う。にもかかわらず、「うんこ」に相当する言葉はトップ20にも入っていない。えー!有事の際に使えないといちばん困る言葉のはずなのに?―これ、教える側の忌避意識に問題の根っこがあるんじゃなかろうか。

 そんな由々しき事態の救世主となりうる一冊が『タイムマシンで戻りたい』(日本うんこ学会)。ありていにいえば「うんもれエピソード傑作選」である。

「ころころ」「締めが甘かった」「気体と固体」……タイトルを眺めただけで、それが一体どんな事態を指しているのかありありと目に浮かんでしまうのが「うんもれ」エピソードの強み。そう、つまり私たちはすでにそれを知っている。本文中の言葉を借りれば、「世界は想像以上にうんこを漏らしている」のだ!

 ページを繰るごとに「それってもううんこだろ」「ウミガメになったあの日」等々、爆笑必至のエピソードが開陳されるが、個人的にいちばん響いたのは「うんこをもらして生き方が変わった話」。〈恥ずかしいと思うその話を人に漏らしてこられたから変わったのか〉―この一文を読んで思い出したのが、いま日本で最も愛されている男・星野源の名エッセイ『そして生活はつづく』(文春文庫)。実はこれ、裏タイトルが「くそして生活はつづく」(!)なのだ。そこには数々の「うんもれ」エピソードはもちろん、一見すると道化的な彼の表現の本質が詰まっている。ああ、そりゃ愛されて当然だよなぁ。

 さて、「うんこ」に対する眼差しがだいぶ柔らかくなってきたところで熱烈にお薦めしたい傑作が、伊沢正名『くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを』(ヤマケイ文庫)である。世界で最も真剣にうんこと向き合っている男が、三十五年間にわたる自らの「野糞」の歴史を振り返りながら、その営みの豊饒さをチャーミングに物語る。禁断の袋とじ写真まで吟味した暁には、きっと誰よりも優しい人間になっているはず。

新潮社 週刊新潮
2017年3月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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