『ネットリンチで人生を壊された人たち』 炎上で職を得る人失う人

レビュー

6
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ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』

著者
ジョン・ロンソン [著]/夏目大 [訳]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784334039721
発売日
2017/02/15
価格
1,296円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「大炎上」の厚みと重みがよくわかる

[レビュアー] 小飼弾

 光文社新書というのは、当世の新書の形をもっとも如実に示したレーベルかもしれない。地味な装丁に派手な帯。『炭水化物が人類を滅ぼす』『英語を学べばバカになる』といった直截的な書名。電子版同時発売……そんな中で、発売されたばかりの『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(ジョン・ロンソン 夏目大・訳)は異彩を放っている。同レーベルらしく電子版も同時発売だが、その異彩ぶりを感じるには古き佳き紙の方がよいだろう。500ページ近い厚さと重さ自体、本書の扱う主題の厚みと重みを反映したコンテンツでもあるのだし。

 原題はSo Youʼve Been Publicly Shamed。邦題よりも一回り大きい。公の場で辱しめられる機会はネットとは限らない。本誌を含む週刊誌もまたその一端を担っているし、そのような刑罰が文化大革命の中国ではなく現代の米国にも存在することを読者は本書で知ることとなるだろう。

 とはいえ、その機会がもっとも多いのはネットだということも疑いようがない。著者が本書に取り掛かった理由も、ネットでなりすまされたのがきっかけである。原著は米大統領選の前に上梓されたが、@realDonald Trump というアカウント名自体、今や公開の場で辱めることにかけては名実ともに世界一の彼も被害者としてスタートしたことを示唆している。炎上で職を得る人失う人。その違いは何だろう。タイムラインからは見えぬ真実が、ここにある。

新潮社 週刊新潮
2017年3月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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