薬師丸ひろ子、チェッカーズ…84年ヒット曲批評

レビュー

8
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1984年の歌謡曲

『1984年の歌謡曲』

著者
スージー鈴木 [著]
出版社
イースト・プレス
ISBN
9784781650807
価格
980円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

1984年はチェッカーズの年!?

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 NHK朝ドラ「あまちゃん」の主人公・アキ(能年玲奈)の母親、天野春子。彼女が家出同然に上京したのは1984年のことだ。東京で暮しながらアイドルを目指していた春子は、この年ヒットした松田聖子「ピンクのモーツァルト」、中森明菜「飾りじゃないのよ涙は」、そして小泉今日子「スターダスト・メモリー」などをどんな思いで聴いていたのだろう。

 スージー鈴木『1984年の歌謡曲』は84年のヒット曲を発売順に聴き直した批評集だ。歌謡曲の歴史的流れというタテ軸と、リアルタイムの音楽状況というヨコ軸を踏まえ、一曲ずつと徹底的に向き合っていく。薬師丸ひろ子「Woman“Wの悲劇”より」のサビのメロディを「名曲性の根源」と呼び、この年の「音楽シーンにおける金字塔」だとしている。また「涙のリクエスト」から「ジュリアに傷心(ハートブレイク)」まで4曲を連打したチェッカーズの革新性を高く評価し、「1984年はチェッカーズの年だった」と言い切る。この独断の妙こそが本書の真価だ。融合していく歌謡曲とニューミュージック。少女性から大人性へと軸をずらしていくアイドルたち。それらの転回点が84年だったのだ。

 では、現在の音楽業界はどうなっているのか。柴那典『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)で、かつての「ヒットの方程式」が成立しない背景を精緻に分析した上で、過去にはなかった音楽の可能性にまで言及している。キーワードは「歌の持つ力」だ。

新潮社 週刊新潮
2017年3月9日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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