『人種戦争という寓話』 廣部泉著

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人種戦争という寓話

『人種戦争という寓話』

著者
廣部泉 [著]
出版社
名古屋大学出版会
ISBN
9784815808587
発売日
2017/01/10
価格
5,832円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『人種戦争という寓話』 廣部泉著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 一九世紀後半から、欧米諸国の間で、黄色人種の台頭を懸念する「黄禍論」が唱えられた。一方日本では、アジア諸民族の連帯を説く「アジア主義」が主張された。著者は、この二つの思想は「コインの裏表」のようなものだったと指摘する。そして、両者が互いに影響し合いながら、人種主義的な言説が拡大し、やがてアジア太平洋戦争に至った過程を解き明かしている。

 ジョン・ダワー『容赦なき戦争』(平凡社ライブラリー)をはじめ、アジア太平洋戦争を「人種戦争」と捉える作品は少なくない。しかし著者は、満州事変以降の日本政府でアジア主義的志向が強くなったのに対して、アメリカの政策決定者たちは、世論や政府の一部に常に存在していた黄禍論的志向から距離を取っていたと結論づけている。人種的言説は、日米開戦の決定的要因ではなく、両国の対立を煽(あお)り立てた「寓話(ぐうわ)」(風刺やたとえ話)であったというのが、著者の見立てである。

 近年世界では、人種主義的言説が蔓延(まんえん)している。それらが政治的に悪用された時に何が起こるか、さまざまな想像をかき立てられる。

 名古屋大学出版会 5400円

読売新聞
2017年3月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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