「ヒップホップ」と「読書」の共通点とは? 読書習慣を定着させるために大切なこと

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世界一やさしい読書習慣定着メソッド

『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』

著者
印南敦史 [著]
出版社
大和書房
ISBN
9784479795797
発売日
2017/03/11
価格
1,540円(税込)

「ヒップホップ」と「読書」の共通点とは? 読書習慣を定着させるために大切なこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

手前味噌ながら、きょうは僕の新刊をご紹介させてください。『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(印南敦史著、大和書房)がそれ。昨年、おかげさまで3万部超えのベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)に次ぎ、読書に関する考え方を綴った書籍です。

前著は、「本を読むのは好きだけど、読書スピードが遅い、記憶できない」という悩みを抱えた方に向けた内容でした。対して今回は、もう少し本との距離が離れた人、つまりは「本を読むのが苦手だ」とか、「読みたくても、なかなか読めない」などといった気持ちを拭えない「やや消極的な読者」が対象。当然ながら前著のターゲットとも共通する部分もあるでしょうが、少しでも本との距離感を縮めてほしいという思いから生まれたものなのです。

ひとつだけいえることがあります。
「本を読むのが苦手だ」というのは、詰まるところ思い込みでしかないということです。
そして(中略)たとえ本を読むのが苦手だといっても、それは現時点でプロセス(過程)が苦手だというだけであり、「本が苦手」だということとは根本的に違う話なのです。
でもコンプレックスのようなものが先に立ってしまうからこそ、必然的に「苦手だ」という部分だけが強調されてしまい、「自分は読書に向いていない」というような考え方につながっていってしまう。ただそれだけのことなのです。(「はじめに」より)

さらにいえば、読書に対する抵抗を減らすための大切なポイントは、「受け入れる」ことだと僕は考えています。「読む気になれない」「長続きしない」「読むのが遅い」「すぐに忘れる」などなど、自分自身のなかのマイナス要素をすべて受け入れることで、可能性が生まれてくるということ。こうした考え方を軸に、2章「『読みたくなる』読書術」を見てみましょう。

人は読書でエディット(edit)される

音楽についての話をします。
僕は、ヒップホップ・カルチャーの影響をその初期段階からリアルタイムで受けてきました。(中略)それは音楽だけでなく、僕のなかのさまざまな価値観にも影響を与えています。
「エディット(edit)」という感覚・手法もそのひとつです。日本語に訳せば「編集」ですが、ヒップホップを軸としたダンス・ミュージックにおいての重要な要素であったのです。(51ページより)

そして、おもに90年代中期までのヒップホップのサウンド・プロダクションを成り立たせていたもののひとつが、「サンプリング」という手法。既存の楽曲の必要な部分だけを抜き出し、つまりエディットすることによって、新しいサウンドにつくり変えてしまうということ。

などという話を聞くと、「それは読書と関係ないじゃん」と思われても仕方がないかもしれません。しかし、読書についても同じことがいえると僕は考えているのです。いいかえれば、読書の創造性は、エディットすることによって高められるということ。

たとえばAという本を読んでなんらかの感銘を受けたとしたら、読み終えたあとの脳裏にはAという「感銘のかけら」が残ります。Bという本から感銘を受けたら、Bという「感銘のかけら」が残ります。CにもDにもEにも、X、Y、Zにも同じことがいえます。

そうやって蓄積されていったAからZは自分自身の内部でエディットされ、組み合わさり、結果的には「それまでになかった新しい形」へと姿を変えていくことになります。つまり、その形こそが「自分にしかない価値観」。読書体験が積み重なり、そこから得られたかけらが絡み合うことによって、「(その読書体験をした)自分だけの価値観」が形づくられるということです。

読書が人の内面をエディットするとは、つまりそういうこと。それこそが読書の創造性であり、魅力でもあるという考え方です。

「やらなきゃいけない感」から脱する

読書に対する抵抗感を減らすために重要なのは、「読まされている感」「やらなきゃいけない感」から自由になること。義務感が絡んでくると、それまで楽しいと感じたり興味を持てたりしたことも、途端につまらなくなってしまうからです。主体的にではなく「気が進まないけど(読めってうるさくいわれるから)しぶしぶ読む」というような状態なので、本当の距離を大きくしてしまうということ。

では、「読まされている感」をなくすにはどうしたらいいのでしょうか? 答えはいたってシンプルで、「楽しむ」ことに尽きます。シンプルではありますが、現実的に「楽しめていない」人は少なくないのです。「読めない」と悩む人が減らないことが、なによりの証拠。

「楽しむ」ことは、快適さにつながります。するとストレスも減っていきますから、読書がさらに楽しくなっていくのです。結果として、より積極的に「次はこういう本を読みたい」という好奇心が増していくことになるでしょう。(58ページより)

いわば、「能動」が大切だということ。つまらなくなるのは、既存の読書のあり方を受動的になぞっているから。だったら、基準を自分のなかに持てばいいということです。たとえば、その本を読む理由が「流行っているから、読まないと乗り遅れる」というようなことでもまったく問題なし。そう感じて読んでみることでなにかを得られるなら、その姿勢をミーハーだといわれようが、どうでもいいわけです。(50ページより)

読書習慣が身につく「お預け読書」

しかし実際のところ、気になるのは「自分を能動に導くためにはどうしたらいいのか?」ということではないでしょうか? 本を買っても、読まずに積んでおくだけの状態を表す「積ん読」という言葉がありますが、 “読もう”という気持ちを持続させられないことも、積ん読が日常化してしまう原因のひとつかもしれません。

だとすれば、まずすべきは「読みたい気持ちを盛り上げる」こと。そこで本書では、そのためのひとつの手段として「お預け読書」を提案しています。「本を読みたい」という欲求を「お預け」状態にしてしまおうというもので、4つのステップから成り立っています。

1.本を買う

書店に足を運び、「ピンときた」本を選ぶことがスタートライン。ちなみにピンとくる要素があることが大切なので、選ぶ基準は、話題性でも、タイトルでも、表紙でも、帯のキャッチコピーでも、目次でも、本文でも、なんでもOK。

2.買った本を”眺める”

ピンとくる本を買ってきたら、その日のうちに、表紙や目次など「本文以前」のところをじっくり眺めてください。ただし、まだ本文は読まないこと。この段階では「本文以前」までの限定された情報によって、本文への期待感を高めていくわけです。この状態を、2、3日なり、1週間なり続けることがポイント。「バカバカしい!」と思われるかもしれませんけれど、そのバカバカしさは意外に重要なのです。

3.買った本を、少しだけ読む

相応の時間の経過とともに期待感が高まってきたら、次は「1ページだけ」あるいは「1パラグラフだけ」、つまり「おもしろそうだな」「ここから先はどうなるんだろう?」と感じるまで読んでみる段階。その結果、「おもしろそうだな」の瞬間が訪れたら、その区切りの部分で本を閉じてしまうのです。そうすれば「もうちょっと読みたかったんだけどなぁ!」と、そこから先の好奇心を持続さ背、肥大化させることができるわけです。

4.3の読み方を繰り返す。

そして、ここから先は「ゆるい習慣化」の段階。自分のペースで、3の読み方を繰り返していけばいいということです。そしてその後は、自分の状態を観察しながら、「お預け読書」のサイクルを少しずつ進化させていきましょう。

1. お預け時間を短くしていく
2. 次に読むまでの時間も短くしていく
3. 一回に読む量を増やしていく
(106ページより)

重要なのは、義務的なものとしてとらえるのではなく、そのプロセスを楽しんでしまうこと。そうすればいつしか、「お預け読書」を意識することもなく、自分にとってのベストなペースが身につくはずです。(102ページより)

本書で僕は、「ワガママ読書」を勧めています。もちろん、仕事のために「読まなくてはならない」というケースもあるでしょうが、それだけで終わらせるのではなく、”事情”から離れて自分本位な読書をしようということ。いわば「受け入れる」ことと「ワガママ読書」が、本書の大きなポイント。ぜひ手にとってみてください。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年3月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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