『パニック経済』
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理系目線で日本の経済を読み解くと
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
経済ってのは健康と似てて、騒がれるのは不安や不調があるから。こうやっときゃ大丈夫という不動の理屈がないゆえ、間違いや嘘が花盛りで、そこに損得までからんでくる。
だもの、経済書や健康本だって玉石混交、というより石コロだらけながら、紹介するに値する稀少な玉を見つけ出す基準だけは簡単で、中身が科学的か否か。
健康の場合、偽薬効果で「病は気から」や「鰯の頭も信心から」が成り立っちゃうケースがあるけれど、経済の方は「考えろ、信じるな」が鉄則で「信じる者は(足を)すくわれる」世界。間違いや嘘を丸呑みするリスクは健康よりデカい。
『パニック経済』の逢沢明は経済学者でもエコノミストでもない、情報学の専門家。脱デフレだ異次元だ3本の矢だヘリコプター・マネーだの「詭弁」とバラ撒きタレ流しは達者な政府や日銀、そのお先棒を担ぐアカデミズムやジャーナリズムの出鱈目と無責任を理系目線で淡々と指摘する。
これ、初めは快感ながら、すぐに腹が立ってきて、最後は恐怖。物価の馬鹿上がりや財政・年金の破綻なんてありえないとタカをくくれなくなるのでね。
あわせて河村小百合の『中央銀行は持ちこたえられるか』(集英社新書)あたりにも手を伸ばすと、あらためて思い知らされるのは、対症療法頼みの不健康な経済に溜まった歪みの巨大さ。ビビらずに済むのは、この国で次の大地震を覚悟しないでいられるような非科学の子だけかと。