「運のいい人」の言葉の使い方とは?

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「運のいい人」の言葉の使い方とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

運のいい人のマナー』(西出ひろ子著、清流出版)の著者は、国会議員などの秘書職を経てマナー講師として独立したという「マナーコンサルタント」。マナーのプロフェッショナルとしての立場から、本書の冒頭で次のように記しています。

マナーとは、自らが美しくあること。周りの人たちとともに幸せになるためのもの。そして、人生に運(ラッキー)をもたらしてくれるもの。
マナーの根底にある相手ありきの「思いやりの心」を身につけて行動すれば、身の回りにどんどんよい出来事が増えて、気づけば運のいい人になれるのです。(6ページより)

マナーを日本語で表現すれば「礼儀」ですが、「礼」とは思いやりで、「儀」は「型」を表したもの。つまり、礼儀=マナーは本来、相手への思いやりの心を形にするものだということです。相手の立場に立ち、思いやりから生まれる言葉や行動を心がければ、コミュニケーションの場はスムーズで心地よいものになるという考え方。

そしてマナーには、大切にすべきポイントである「基本五原則」があるのだと著者はいいます。「表情」「態度」「あいさつ」「身だしなみ」「言葉遣い」の5つについて、相手に印象よく受け入れられるように心がけることが大切だということです。

1. 表情:明るく、笑顔で
2. 態度:姿勢よく、つねに背筋を伸ばす
3. あいさつ:元気よく、できるだけ先に声をかける
4. 身だしなみ:不快感を与えない清潔感と、場所にあったファッション
5. 言葉遣い:できるだけ丁寧に、伝わりやすく
(11ページより)

まずは自分から、思いやりを持って相手にプラスとなる言葉遣いや行動を実践してみる。すると相手は、自然と心地よくなりうれしい気持ちになる。その結果、相手が心を開いてくれて、自分にもプラスの結果が返ってくる。このようにお互いが幸せを感じられる関係は、「相手ありき」というマナーがなければ築けないわけです。

こうした基本的な考え方を踏まえたうえで、ビジネスの現場に活かせそうな第4章「運のいい人の言葉遣い」を見てみたいと思います。

3つの「こ」のひとつ、「言葉」を極める

著者はいつもマナーの講演において、”3つの「こ」”を大切にすべきだと伝えているのだそうです。ひとつ目の「こ」は心の「こ」、ふたつ目は言葉の「こ」、みっつ目は行動の「こ」。「こうした心があるからこそ、こういう言葉が出て、こういう行動になる」と、3つが揃った状態が重要だということ。

相手に対するどのような「言葉」や「行動」にも、自分自身の「心」が込められているからこそ、信頼を得られるというのです。もし心がなければ「形だけ」としか受け取ってもらえず、お互いのハッピーな関係や開運にもつながらないわけです。

特に日常生活において、言葉はコミュニケーションの鍵。同時に、言葉は文字にすればみることができ、声に出せば聞くことができるもの。つまり、マナーの型でもあるということ。

そしてその言葉は、本来なら相手に対する心・気持ちがあるからこそ発せられるもの。そこで「自分の気持ちを伝えたい」「どんな言葉をかければ相手が喜んでくれるだろう」「みんなにとってプラスになるには、どう伝えるべきか」などを想像しながら言葉にすることが大切。著者はそういいます。

人間関係にはイヤなこと、つらいことが山ほどあるかもしれません。でも、たとえば、どうすればみんながウキウキするだろう、あのしかめっ面の上司をどう笑わせてやろうかなどと、自分の視線の角度をちょっと変えて想像してみてください。(中略)自分の頭の中で、プラスになることを勝手に想像する。これを愉しみながら遊び感覚で行うことは、お金もかかりませんし、誰にも迷惑をかけることでもありません。そして、もし「これぞ」というアイデアが浮かんだら、実践してみましょう。あなたの愉しさが周りの人にも伝わります。愉しんでいる人たちの元には運が寄ってきます。(83ページより)

マナーの心があれば、みんなで運がよくなれるすべを身につけられるということ。そしてマナーは決して堅苦しいものではなく、自分で想像し、創造していく「愉しい」ものなのだと著者は強調しています。(82ページより)

運のいい人は美しい言葉を使う

本来、言葉の使い方にはかなり緻密で厳密な型があるもの。そこで、基本はしっかり覚えておくことが重要。正しい敬語や手紙の書き方などの型は、知識として心得ておくと、周囲からの評価にも繋がって運が巡ってくるのだといいます。そこで日常的に使う言葉について、著者はいくつかの美しい言い回しを紹介しています。

・「今日(きょう)」 → 「本日(ほんじつ)」
・「こっち」「これ」「ここ」 → 「こちら」
・「さっき」 → 「さきほど」
・「すごく」 → 「とても」「大変」
・「ちょっと」 → 「少々」
・「すぐに」 → 「さっそく」
・「どうですか?」 → 「いかがですか?」
・「わかりました」 → 「かしこまりました」
・「知りません」
→ 「存じ上げません」(人を知らない場合)
→ 「存じません」(人以外の物事を知らない場合)
(86ページより)

ところで家族や友人、気の置けない仲間などと話しているとき、つい話題は自慢話や人の悪口になっていることがあるかもしれません。しかし、それらは話し方によってはただの自慢話にも聞こえてしまいます。また、人のことを悪くいえば、その言葉は巡り巡って、結局は自分に還ってくるもの。自分がいわれてイヤだと感じることを、人に対していわないように意識すべきだということです。(85ページより)

運のいい人は敬語や依頼の言葉を上手に使う

型どおりの敬語を話すだけでは、どうしても冷たく聞こえてしまうもの。相手に思いやりを持って話すことはとても重要ですが、特に否定の言葉は受け取る側が慇懃無礼(いんぎんぶれい)な言葉と感じやすいため、注意が必要だということ。ちなみに慇懃無礼とは、あまりにもていねいすぎるため誠意が感じられず、かえって失礼にあたること。

オファーを断られる側は、心理的にカチンときている状態にあります。にもかかわらず、あまりにもていねいな敬語で伝えられたりすると、「バカにされている」「見下されている」と感じやすいというのです。そこで、たとえば「できかねます」「いたしかねます」といった言葉は、直属の上司のように比較的近しい関係の人には使わないなど、相手との距離感を意識しながら使い分けるべきだというのです。

実際、お仕事で営業を担当している方などは、とくに臨機応変に対応することが必要でしょう。単純に正しい敬語や態度を避け、人と同じことをやっていてもよい関係は築けません。相手の立場で考え、型から離れて、相手が喜ぶこと、望むことをやろうとする気持ちが大切なのです。(91ページより)

とはいえ、近しい間柄でも、伝えたい言葉を発するだけでは角が立つこともあるでしょう。たとえば頼みごとをするとき、家族同士であっても、部下に対してであっても「そこの新聞、取って」「急いでコピーしてきて」などと偉そうな命令口調で伝えたら、忙しいときなどにはムッとされてしまっても不思議はありません。

こういう場合は、クッション言葉を加えたり、語尾に「?」をつける伺い型にすれば、相手は気分を害さず気持ちよく言葉を受け止められるそうです。クッション言葉とは、「忙しいところ申し訳ないけれど」「お手数をおかけしますが」「差し支えなければ」「恐れ入りますが」など、相手を思いやるひとこと。(90ページより)

本書を読むと、マナーを意識することは決して難しくはなく、むしろ「当たり前のことを当たり前にする」ことこそが大切なのだということがわかります。相手の気持ちを察する能力を強化するためにも、読んでみてはいかがでしょうか。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年3月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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