『SCS』上下巻を書き終えて――『SCS ストーカー犯罪対策室 下』刊行エッセイ 五十嵐貴久

エッセイ

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SCS ストーカー犯罪対策室 下

『SCS ストーカー犯罪対策室 下』

著者
五十嵐貴久 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334911539
発売日
2017/03/15
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『SCS』上下巻を書き終えて――『SCS ストーカー犯罪対策室 下』刊行エッセイ 五十嵐貴久

[レビュアー] 五十嵐貴久

『SCS ストーカー犯罪対策室』はあくまでも小説ですから、現実をそのまま引き写しているわけではありませんが、このストーリーを考え始めた平成25年から4年経ち、予想していた以上にストーカー犯罪は激化しています。

 警視庁の統計によれば、平成27年度のストーカー事案の相談等の状況は2万1968件、前年比マイナス855件、マイナス3・7パーセントということですが、平成23年まで、1万5000件前後で推移していた数が平成24年からは2万件前後に跳ね上がっています。

 ニュースなどで取り上げられるストーカー犯罪は、殺人あるいは殺人未遂のようなある意味で「派手な」事件ですが、一般的なイメージとして、ストーカー犯罪というと、どちらかと言えば陰湿な、嫌がらせのようなパターンが多いというのが世間の認識ではないでしょうか。

 ですが、もうそういう考え方が通用しなくなっているのではないか。そんな危惧がぼくの中にはあります。

 先の統計を詳しく比較検討していくと、殺人に至るケースこそ決して多くありませんが、殺人未遂、傷害、暴行、脅迫、強要、強姦、強制わいせつなど物理的な被害が発生する事件はほぼ右肩上がりで増え続けています。

 そして、加害者は男性がほとんどと言われていますけど、こちらも(何らかの意味で時代を反映しているのでしょうか)女性の加害者が増えていたり、男性被害者が増えているなど、これまでの認識を改めなければならないように思います。

 ストーカー犯罪の恐ろしい点は、いつ、誰でもがストーカーの標的になる可能性があること、そしてもっと怖いのは、いつあなたがストーカーになってもおかしくない、というところです。『SCS』が変な形で何かを予言していなければいいのだけれど、と思ってしまうのですが、どうなんでしょうか。書き終えて、妙な不気味さを感じています。

光文社 小説宝石
2017年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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