『決定版!グリーンインフラ』 グリーンインフラ研究会など編

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決定版!グリーンインフラ

『決定版!グリーンインフラ』

著者
グリーンインフラ研究会 [編集]/三菱UFJリサーチ&コンサルティング [編集]/日経コンストラクション [編集]
出版社
日経BP
ジャンル
工学工業/土木
ISBN
9784822235222
発売日
2017/01/21
価格
3,456円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『決定版!グリーンインフラ』 グリーンインフラ研究会など編

[レビュアー] 塚谷裕一(植物学者・東京大教授)

自然生かした公共事業

 グリーンインフラ。馴染(なじ)みがない言葉だが、これはグレーインフラ、すなわちコンクリートと鉄筋でがちがちに固める旧来型インフラ整備と対になる、新しい概念なのである。

 従来、治水や災害対策といった公共事業は、すべてグレーインフラが担当し、しばしば環境保護や種の保全と鋭い対立を生んできた。その対立はしばしば「人が大事か自然が大事か」という極論に至り、遺恨を残すのみだった。

 グリーンインフラは違う。包括的視点から、治水や災害対策、経済効果、そして生態系保全をともに実現する方策を目指す。先進国ではグレーインフラが老朽化し、その補修費が負担となる一方で、人口が減少し、遊休地が増えつつある。また緑地帯の持つ災害緩衝効果の理解も深まってきた。そうした中「自然が持つ多様な機能を賢く利用することで、持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用」を目指す概念・グリーンインフラが生まれた。

 この概念は既にEU、米国などが先駆しており、国際的な取り決めにも盛り込まれ始めた。国内でも竹中工務店、大成建設など、従来グレーインフラの代表だった企業も積極的に取り組みを始めているという。驚きだ。

 本書はこの全く新しい思想について、総合的に分かりやすくまとめている。一章一章が適度に短いため、生態系インフラ、雨庭、緑道、あるいは、生物多様性保全への取り組み方を認定する仕組み・JHEP認証などの目新しい語も次々登場するが、一気に読み進められる。

 しかしこれほど画期的な取り組みがまだほぼ無名の存在だとは、歯がゆいばかりだ。成長戦略上、日本はこのグリーンインフラを普及させ、さらに磨いて独自の技術を開発・輸出し、世界をリードしていくべきだろう。あらゆるレベルの治政者、公共事業関係者、建設事業者、そして自然保護活動家に読んで欲しい一冊である。

 ◇グリーンインフラ研究会=主に大学の研究者らで構成。自然を有効活用した防災対策、経済振興などを推進。

 日経BP社 3200円

読売新聞
2017年3月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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