【聞きたい。】中野京子さん 『中野京子と読み解く 運命の絵』

インタビュー

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中野京子と読み解く 運命の絵

『中野京子と読み解く 運命の絵』

著者
中野 京子 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163906164
発売日
2017/03/10
価格
1,922円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】中野京子さん 『中野京子と読み解く 運命の絵』

[文] 産経新聞社


中野京子さん

 ■人知の及ばぬものと対峙

 絵はただ見るのではなく、歴史的文化的背景とともに“読む”と俄然(がぜん)面白くなる。ベストセラーの『怖い絵』『名画の謎』シリーズを通して、美術鑑賞の奥深い喜びを伝えた絵画エッセーの名手が、新たに選んだテーマは「運命」だ。

 「文学や哲学などと同様、絵画も運命を多く扱ってきた。直接的に運命を表した物語画もあれば、結果的に絵が、描いた画家の未来を予告するなど“運命の不思議”もある。人は皆、ままならない人生の中で、己の運命について考えるはず。面白く読んでもらえるのではと思いました」

 人は運命にあらがえないのか。この根源的な問いといえば、ギリシャ悲劇でおなじみのオイディプスの神話。「運命から逃れようとして、運命につかまってしまう物語です」

 本書では幻想的作風で知られるフランスのモローと、ドイツ象徴主義の画家シュトゥックが同場面をどう描いたのかを比較しており、興味深い。

 また、生か死か-古代ローマの剣闘士の闘いで、運命の決断が下される直前を描いた仏画家ジェロームの「差し下ろされた親指」。米ハリウッド映画「グラディエーター」が生まれる一つのきっかけになった“運命の絵”という。他にも、歴史を変えた一戦に、未曽有の自然災害、ファム・ファタール(運命の悪女)や人生を暗転させる結婚まで、掲載の主要23作品にはありとあらゆる運命が渦巻く。絵画自体が数奇な運命をたどることもある。

 ただ感じればよい-そんな日本人にありがちな絵画鑑賞法に対し、異を唱えてきた。古代ギリシャ世界の勝利を描いた16世紀の歴史画「アレクサンドロスの戦い」も、現実にイスラムの脅威にさらされていた欧州で生まれたと知れば、「だからこう描いたのかとわかる。知ればもっと面白くなるんです」。(文芸春秋・1780円+税)

 黒沢綾子

  ◇

【プロフィル】中野京子

 なかの・きょうこ 北海道生まれ。作家、ドイツ文学者。前述のシリーズのほか、『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』など著書多数。今夏から冬にかけて兵庫と東京で開催予定の「怖い絵展」の特別監修も務める。

産経新聞
2017年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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