『暗殺競売』
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明文堂書店石川松任店「戦慄と驚愕の一冊」【書店員レビュー】
[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)
暗殺を副業とする佐分利吾郎は、オークション形式で暗殺を斡旋する《組織》が運営するサイト「殺し屋.com」を利用することで副業の稼ぎを得ていた。悪党のみを標的とする彼の本業は、刑事だった。そんな彼は、本業の上司である如月蜜子からシリアルキラーだと疑われた(恋人やフィアンセが続けて亡くなっているため)戸倉日名子を調べるよう命じられる。彼女の婚約者が「殺し屋.com」で殺害を依頼されていたことを知った吾郎は、うやむやのうちに捜査を終わらせようとする。吾郎が日名子と関わりを持つようになっていたのと同じ頃、吾郎の暮らす街でホームレスを狙ったピストルによる殺人事件が連続して起こっていた……。
もし憎らしいアイツを、自分の手を汚さず死なせることが出来たら……。本書は、そんな歪んだ願望を叶えるかのような暗殺サイト「殺し屋.com」に関わった人々(主に殺し屋たち)を巡る群像劇です。それぞれのエピソードに人間心理の歪みが生み出す意外な結末が用意されていますが、それだけでは終わりません。この小説にはさらに衝撃的な罠(曖昧な表現ばかりになって申し訳ないのですが……)が仕掛けられています。戦慄と驚愕の一冊という言葉が似合う作品です。