西原理恵子『パーマネント野ばら』/原幹恵 映画になった新潮文庫

レビュー

3
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パーマネント野ばら

『パーマネント野ばら』

著者
西原 理恵子 [著]
出版社
新潮社
ISBN
9784101370712
価格
432円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

西原理恵子『パーマネント野ばら』/原幹恵 映画になった新潮文庫

[レビュアー] 原幹恵(女優)

 本屋さんで西原さんの『ダーリンは70歳』を楽しく立読みして、しばらく迷った挙句、『パーマネント野ばら』の方を買うことにしました。この作品を原作にした映画をずっと観たかったからでもあります。

 サイバラ(と書きたくなりますね)さんの漫画をきちんと読んだのは初めて。いわゆる上手な画ではないけど、実に親しみやすく、可笑しく、うっすらとした哀しみや優しさがあります。

 海辺の小さな町のパーマ屋さん(店の名前が「野ばら」)が主な舞台で、そこの出戻りの娘なおこ(私と同じで二十九歳くらい?)が主人公です。主人公と言っても、群像劇で、パーマ屋に集まる(みんなパンチパーマをあてに来る)オバサンたちや、なおこの元同級生たちの恋愛話がさまざまに描かれていきます。なおこにも新たな恋人がいて、こっそり海岸で会っていて……。

 途中まで面白く読んで、DVDを観ることにしました。以下、ネタバレありです。

 なおこが菅野美穂さん、元同級生が小池栄子さん、池脇千鶴さん、母親が夏木マリさん、なおこの恋人が江口洋介さん。みんな巧いし、役にハマっているしで、楽しい。原作ほどハチャメチャなトーンでこそありませんが、原作にかなり忠実です。

 ラスト近く、江口さんは実は菅野さんの高校時代の教師で、初恋の相手で、恋愛の最中に突然亡くなったことがわかります(後で原作を読み通すと、少し違う設定になっていました)。菅野さんは今なお妄想でデートを続けていて、ついに「わたし、くるってる?」と小池さんに訊ねます。小池さんは「そんなやったら、この街の女はみんな狂うとる。ええねん、わたしら若いときは世間さまの注文した女、ちゃんとやってきたんや。これからはわたしもあんたも、好きにさせてもらお」ときっぱり答えてあげます。伏線もテーマも全て明らかになる名場面。

 原作に「ここ(「野ばら」)は女のザンゲ室やからなー」というセリフがありましたが、私は美容室では世間話程度に留まります。だけど、メイクルームではヘアメイクの方といろんな話をしますし、あるいは深夜のカフェでは友人たちとけっこう深く喋り合います。私は相談すること自体がストレス発散になるので、友人からの「バカね」「やめなよ」みたいなアドバイスは素直に聞かない方です。逆に私が強く言いすぎると、少しの間連絡が取れなくなる友人もいて、久しぶりに顔を合わせると、「会ってないうちに、そんなことしてたの! あんなに言ったのに!」と呆れることもあります。

 女って、ある年齢になると、「好きにさせてもらお」と、全部を自分で決めたがる生物みたいです。もっとも私は、後で友人から「どっかで軌道修正するタイプよね」と言われるので、無意識に意見を聞き入れているのかもしれません。きっと、「野ばら」に集まる常連のお客さんたちのように、私もこんな会話を女同士で死ぬまでずっと続けるんだろうな。

 原作の「うん。おんなってどうにかなるみたい」というセリフも私は好きでした。どうやら私は、三十歳が近くなって、何だか生きやすくなった気がしているようです。

新潮社 波
2017年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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