『黒島の女たち』 城戸久枝著

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黒島の女たち 特攻隊を語り継ぐこと

『黒島の女たち 特攻隊を語り継ぐこと』

著者
城戸 久枝 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163906058
発売日
2017/02/24
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『黒島の女たち』 城戸久枝著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

特攻隊員との交流伝え

 薩摩半島から南へ約50キロの場所に、黒島という小さな孤島がある。

 終戦が近づく昭和20年の春、この島には知覧(ちらん)や鹿屋(かのや)などから沖縄に向かった特攻隊員が不時着し、島民は怪我(けが)を負った彼らを介抱した。本書は戦後も交流を続けた島民と特攻隊員たちのその物語が、いかにして語り継がれたかを描いたノンフィクションである。

 戦後70余年、実際に島へ足を運び、数少ない当事者に話を聞く。切れそうになる細い糸を、どうにか手繰っていくような取材であっただろう、と思う。だが、本書を読んでいると、そうして遠く離れて初めて見える光景や、語られる思いもあるのだ、という当たり前の事実にあらためて気づかされる。

 取材を続ける中で著者が中心に据えるのは、黒島で生じた奇跡のような交流を語り継ごうとした小林広司という映画監督だ。

 「黒島を忘れない」という名のドキュメンタリーを撮り、癌(がん)と闘いながら最期まで島に通い続けた一人の男。その夫の遺志を引き継ぎ、一冊の本を仕上げた妻――。二人がそれぞれの思いを抱えながら、島の戦争の記憶の伝え手となっていく過程を描いていくのである。

 わずかな人々の志によって、物語がかろうじて伝えられる。そのことから著者が浮かび上がらせたものとは何か。それは戦争の記憶を伝え続けることの難しさであると同時に、戦争の記憶とはこのようにも伝え得るのだ、という希望であったに違いない。

 『あの戦争から遠く離れて』――10年前に上梓(じょうし)され、ロングセラーとなった著者のデビュー作のタイトルである。以来、「戦争を知らない世代が戦争を語り継ぐこと」をテーマにしてきた著者は、彼らが紡いできた細い糸をそっと掴(つか)んだ。本書はそうすることで自らも黒島の物語の伝え手に連なろうとした、一人の書き手の切実な記録でもある。

 ◇きど・ひさえ=1976年愛媛県生まれ。『あの戦争から遠く離れて』で大宅壮一ノンフィクション賞など。

 文芸春秋 1700円

読売新聞
2017年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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