『マルティン・ルター エキュメニズムの視点から』 W・カスパー著

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マルティン・ルター

『マルティン・ルター』

著者
W.カスパー [著]/高柳俊一 [訳]
出版社
教文館
ジャンル
哲学・宗教・心理学/キリスト教
ISBN
9784764264595
発売日
2017/01/25
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『マルティン・ルター エキュメニズムの視点から』 W・カスパー著

[レビュアー] 納富信留(ギリシャ哲学研究者・東京大教授)

相手方から新たな光

 マルティン・ルターが「九五カ条の提題」をヴィッテンベルクの城門に掲示し、宗教改革が始まったのが1517年。その後、キリスト教ではローマ・カトリックからプロテスタント諸派が分離し、宗教的な対立が続いてきた。五百年の記念を迎えた本年、ルターの思想と行動をどう評価するのかが改めて問われる。

 本書はローマ教皇フランシスコに親しいドイツのカスパー枢機卿が著したルター論である。つまり、ルターが痛烈に批判し、戦った相手方の代表である。状況に関わる当事者の視点とこれまでの研究の蓄積が、ルター像に新たな光を当てる。

 著者はルターの時代状況や行動の意図を冷静に分析し、カトリック教会側の対応に反省の目を向ける。教会分裂の責任はルターにだけあるのではない。彼は本来のカトリック的精神を再発見したとの評価もある。また、近代精神を代表するという人物像も、現代の視点から問い直される。強烈な個性で激烈な言葉を発したルターの論争的側面だけを強調しない、バランスのとれた検討が簡潔に示される。ルター神学に神秘主義的な傾向を指摘しつつ、その宗教的な深みに眼差(まなざ)しを向ける。キリスト教とは何か、本質を問う哲学がここにある。

 本書では、カトリックからプロテスタントへの歩み寄りがもたらす豊かさが示唆される。副題にある「エキュメニズム」とは、現代に模索されるキリスト教の教会一致への運動である。それは様々な困難を経験し抱えつつ、カスパーらが今日も辛抱強く推進する対話の試みである。本書には『マルティン・ルター―ことばに生きた改革者』(岩波新書)を著したルター研究者の徳善義和氏も文章を寄せている。

 五百年という区切りに新たなキリスト教のあり方を探る本書が、様々な問題と分裂を抱える世界に生きる私たちに、改めて考えるべき問題を提示する。高柳俊一訳。

 ◇Walter Kasper=1933年生まれ。神学博士、枢機卿。教皇フランシスコの霊的助言者。著書に『信仰入門』など。

 教文館 1400円

読売新聞
2017年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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