『せいのめざめ』 益田ミリ、武田砂鉄著

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せいのめざめ

『せいのめざめ』

著者
益田 ミリ [著]/武田 砂鉄 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784309025421
発売日
2017/01/26
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『せいのめざめ』 益田ミリ、武田砂鉄著

[レビュアー] 青山七恵(作家)

 性に目覚める頃、思春期の始まりの記憶は曖昧だ。いろいろ大変だったなあ、という借り物のような感慨はあるけれど、何がどう大変だったのか、そのとき感じていたように思い出すことは難しい。

 ところが本書を読んでいると、手品師が繰り出す万国旗のように、あの頃感じていた胸のざわつき、不安と恐怖とほんの少しの高揚感が、次から次へと湧き出てくる。保健体育の授業や友達との噂(うわさ)話では物足りず、知識の隙間を埋めるべく無軌道にどこまでも膨らんでいった「性」にまつわる想像の世界を、益田ミリ氏は漫画で、武田砂鉄氏はコラムで、その危なっかしさと繊細さをユーモアに包んで優しく描き出す。今振り返ればあの隙間は、なんと豊穣(ほうじょう)な隙間だったことか。とんでもない勘違いもたびたび訪れた気まずい瞬間も、あの頃の切実さを思えば決して笑い飛ばすことはできない(とはいえやっぱり、ちょっとは笑ってしまうけど)。

 大人になれば、埋めたかった隙間は多少減る。でも今は、本書が思い出させてくれた思春期の野放図な想像力が、ひたすらに恋しい。(河出書房新社、1300円)

読売新聞
2017年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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