『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』
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『古書収集十番勝負』
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古書ミステリーの人気シリーズ完結!
[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)
累計640万部の人気シリーズの本篇が完結した。三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台』である。
北鎌倉にあるビブリア古書堂の若き店主、篠川栞子は極端な人見知りだが圧倒的な書物の知識と洞察力の持ち主だ。ここで働く五浦大輔は活字恐怖症だが、本に対する憧れは強い。探偵役の栞子とワトソン役の大輔が古書をめぐる謎を解決していくのだが、登場する書籍は実在するものばかりで読書欲と知識欲を刺激する。第7巻でモチーフとなるのはシェイクスピア。栞子の祖父が遺した巧妙な罠によって、彼女たちは17世紀に刊行された貴重な初戯曲集を手に入れるべく、大勝負に出ることになる。
古書の謎はもちろん、その背後にある人間模様、栞子と大輔の不器用な恋愛の行方でも読ませる。本篇終了を惜しむ声も多いが、番外篇やスピンオフの形でシリーズは続く予定だという。実写とアニメ双方の映画化も決定している。
著者の三上氏に影響を与えたのが紀田順一郎氏。〈古本屋探偵〉シリーズが有名だが『古書収集十番勝負』(創元推理文庫)もコミカルなビブリオ・ミステリーだ(『魔術的な急斜面』を改題したもの)。
本の街、神田神保町の古書店の主人が後継者選びのため娘婿2人に出したお題は、期日までに指定の古書10点をできるだけ多く集めよ、というもの。挙がった書名はこちらも実在のもので、徳永直『赤い恋以上』、福永武彦『ある青春』、菊池寛『真珠夫人』、夢野久作『白髪小僧』……。この競争に古書マニアたちが首を突っ込み、ドタバタな争奪戦が繰り広げられる。
海外の古書ミステリーといえばジョン・ダニングのクリフォード・ジェーンウェイを主人公とするシリーズがすぐ浮かぶ。第1弾の『死の蔵書』(宮脇孝雄訳、ハヤカワ文庫)では稀覯本を発掘する“古本掘出し屋”が殺され、古書をこよなく愛する刑事クリフが捜査に乗り出すが、やがて彼の人生も大きな転換点を迎える。こちらも蘊蓄たっぷり。アメリカの古書業界が見えてくるのも一興だ。