【聞きたい。】中島弘象さん 『フィリピンパブ嬢の社会学』

インタビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フィリピンパブ嬢の社会学

『フィリピンパブ嬢の社会学』

著者
中島 弘象 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784106107047
発売日
2017/02/17
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】中島弘象さん 『フィリピンパブ嬢の社会学』

[文] 産経新聞社


中島弘象さん

 ■交際で知った真の彼女たち

 大学院時代、著者は修士論文のテーマを「フィリピンパブ(以降PPと略す)の学術調査」にしようと考えた。指導教官も興味を示した。実態調査のため、初めてPPの門をくぐった。

 「テーブルについたホステスの一人がミカでした」。約6年半前、彼女は来日。日本でお金を稼ぎ、祖国の家族に仕送りするためだ。当時25歳。著者より3つ年上だ。彼女の優しい人柄にひかれ、店に通ううち2人は付き合うように。指導教官に告げると、「そんな危ないこと、すぐやめなさい!」と叱責された。それでも付き合いを続けた。

 「ミカとの交際で楽しいこともあり、一方、雇い主のヤクザの所に乗り込んだことも。パブ嬢たちの奴隷同然の暮らしを見せられたり、汚い部屋に監視付きだったり、すさまじい生活ぶりでした。これは深い、もっと知りたいと思うようになった。怖いもの見たさの日比の民間交流ですね」

 実態調査は続く。偽装結婚する人を目の当たりにし、元ブローカーに会うこともできた。生育環境や価値観の違いに2人は時折ぶつかった。本書はこうした数々の実体験を基に、日比関係の裏側を掘り下げた国際関係学、そして文化人類学の書ともいえそうだ。

 「PPって色眼鏡で見られやすいけれど、この研究とミカを通じて本当の奥深さを知った。偽装結婚にしても犯罪の加害者と被害者がいて、いずれも相対してみれば普通の人々。人物を評価する際にもっと温かく寛容な心を持とう、と教えてくれたのは当事者たちだったんです」

 一昨年10月、著者はミカさんと結婚した。今年7月には第1子が生まれる予定だ。出会いから5年-。

 「今はとても幸せです。自分で言うのも変ですが、この本は事実に根ざした恋愛小説とも読めます。彼女と局面ごとに真剣に向き合ってきましたから」(新潮新書・780円+税)

 川村達哉

  ◇

【プロフィル】中島弘象

 なかしま・こうしょう 平成元年、愛知県春日井市生まれ。中部大学大学院修了(国際関係学専攻)。在学中から、経済的に恵まれない日比国際児の支援活動にかかわりつつ、フリーライターとして活躍。

産経新聞
2017年4月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加