「スベること」は怖くない? TVリポーターが明かすコミュニケーションのコツ

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「スベること」は怖くない? TVリポーターが明かすコミュニケーションのコツ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

誰とでも3分でうちとける ほんの少しのコツ』(鈴木あきえ著、かんき出版)の著者は、10年にわたり「王様のブランチ」(TBS系列)のリポーターを務める人物。そんな立場上、アイドル、お笑い芸人、女優、芸能界の大御所など、多くのゲストとトークを繰り広げてきた実績を持っているそうです。

でも、本人によれば「元・人見知り」で、リポーターとしても失敗の連続だったのだといいます。しかし、だからこそ断言できることがあるというのです。それは「コミュニケーションに才能はいらない」ということ。誰にでもできるほんのちょっとのコツを意識するだけで、人とのコミュニケーションは驚くほどスムーズになっていくというわけです。 

この本では、私がいろんな人から教えてもらい、試行錯誤しながら身につけていった、ほんのちょっとの会話のコツをご紹介します。
誰とでもすぐにうちとけられる会話のコツは、たとえば、こんなことです。

自己紹介にほんのひと言だけつけ加えること
初対面がこわくなくなるように、ちょっとだけ準備をすること
相手が言われてうれしいつっこみ方を知っていること
緊張するシーンで自分を落ち着かせる方法を覚えること
スベったとき、相手を怒らせたときのフォロー言葉を持っていること……
(「はじめに」より)

コツさえ知っていれば、年齢も性別も職業も関係なく、どんな人とでもすぐにうちとけられるようになるのだといいます。そのことを心にとどめ、きょうはChapter 3「ピンチを乗り切るコツ」に焦点を当ててみたいと思います。

「スベること」は怖くない

著者が普段自分にいい聞かせている言葉に、「いわずに後悔するより。いって後悔する」というものがあるのだそうです。「ここをつっこんで相手を怒らせたりしないかな」とか、笑いを取りにいってスベッたらどうしよう」と思うことでも、「いわないで後悔するくらいなら、いって後悔したほうがいい」という考え方。

それは、恋愛がらみの噂で話題になっている俳優さんに対して、「最近はどんなところでデートしたんですか?」とさらっと一歩踏み込んでみるときなどにもいえるのだといいます。視聴者が気になっていることに触れ、ゲストの素の反応を引き出せれば、リポーターとしての任務が達成できるということ。

そんなときは、もう、スタッフを信用して、あたって砕けろの気持ちでゲストにつっこみを入れます。ここでも、「言わずに後悔するより、言って後悔する」の精神で勇気を出します。たとえカットされることになっても、聞かなければ何もはじまりません。(91ページより)

もちろん以前は怖かったそうですが、いまは「フォロー言葉」という強い味方がいるから怖くないのだとか。それは文字どおり、口に出してしまった言葉をフォローする言葉。思い切って攻めて「やばい、相手を怒らせたかも」と思ったら、あるいは盛り上がると思って発言した結果「しーん」としてしまったら、すかさずフォロー言葉を使うというのです。

たとえば、年下の俳優さんとのロケで、あえて敬語を使わずにタメ口をきいて親しい雰囲気を出したかったとします。
けれどそのとき、相手が、タメ口で話されたことにちょっとでもムッとした空気を感じたら、ここでフォロー言葉。「すみません、弟に似ていたもので!」などとフォローを入れます。もしくは「ごめんなさい、私、かっこいい年下には血糖値があがっちゃうんですよ」というフォロー言葉でもいいかもしれません。(92ページより)

最初のことばで空気がピリッとしても、フォロー言葉さえ使えれば、場はなごやかになるといいます。ちなみに著者は、笑えなかった状況を逆手にとって、新しい笑いを生むお笑い芸人からフォロー言葉を学んだのだそうです。(90ページより)

3カメの「引き」の自分を持つ

会話をしているとき、会話中の自分を「引き」で見ている別視点の自分を持つことができたら、気持ちが落ち着くもの。そうすれば、なにかトラブルが起きたりピンチに陥ったりしても、冷静に対処することができるわけです。そして著者はこれを、「3カメの自分」と呼んでいるのだそうです。

テレビには、MC(司会者)を映す1番カメラ(通称1カメ)、ゲストを映す2カメ、すべてを引きでとらえる3カメ…など、いくつかのカメラが配置されており、そのつど、どのカメラの映像を使うかを決めて放送されています。

そして普段、人が会話をしているときは「自分目線」の「1カメ」だけで話をしがち。しかし「話している自分」と「相手」を引きで見ることができる「3カメ」ポジションを持つと、会話を客観的に見ることができるというのです。

ロケの最中にみんなを楽しませたいと思いながらがんばっているとき、ピクリとも笑わないカメラマンがいたとします。著者の立場からすると、現場スタッフの笑い声は、ロケがうまくいっているかどうかのバロメーター。そのため、まったく笑わない人がいると、「今回のVTR、大丈夫かな」と不安になるのだそうです。

でも、「3カメの自分」がその撮影現場自体をとらえていたとしたらどうでしょう? 著者はそんなとき、ピクリとも笑わないカメラマンに向かって一生懸命笑いをとろうとしている一生懸命な自を見て、ちょっと笑ってしまうというのです。空回りしている自分を笑える余裕を持つことができたら、テンパらずにすむということ。

もしみなさんが、大事なプレゼンや人前での挨拶な度で、緊張して噛み噛みになっちゃったら、一度「3カメの自分」になってみてください。
落ち着いて自分の姿を引きでとらえたうえで、「今、私、めっちゃ噛み噛みですよね。噛むごとにみなさんの”イラッ”という心の声が聞こえてきます。もう少しあたたかく見守っていただけるとうれしいです」などと言えば、緊張が伝わっていたまわりの人の気持ちも、ほぐれるのではないでしょうか。(98ページより)

「3カメ」に切り替えるという発想は、たしかにさまざまなシチュエーションに応用できそうです。(96ページより)

最低3回失敗! エラー慣れのススメ

「『つまらない』といわれるのが怖く、自分で考えた企画が出せない」という人がいます。あるいは、失敗するのが怖くてチャレンジできないという人もいます。しかし著者はそういう話を聞くと、もったいないなと感じるのだそうです。

つい、ものごとを完璧にこなそうと考えてしまう人がいますが、自分が勝手に思う「完璧」は、ズレている可能性もあるはず。だったら、いまのままの自分でトライして「ここが足りない」といわれたほうが、よっぽど手っ取り早く修正できるということ。

誰にとっても「正解」という、テストの答えのようなものって、社会に出るとほとんどないと感じます。Aさんには「全然ダメ」と言われても、Bさんには「おもしろいじゃん!」と言われる可能性だってありますよね。テレビ業界では、そういうことが毎日のようにあります。
だから、審査員を一人にしないことも大事だと思います。いろんな人にあたってみて、それでも全員にダメだと言われたら、はじめて自分の企画を見直してもいいと思うんです。
自ら「俺は失敗しにいくぞー!」くらいに思っているほうが、やりたいことをできる確率が上がる気がします。(117ページより)

著者もロケのたびにどこかで失敗し、そのたびにディレクターから怒られたり、反省したりということを繰り返しているのだといいます。100パーセント完璧にできたロケなど、ほとんどないというのです。

しかし失敗をしない限り、自分のやっていることを点検することは不可能。それでは、成長するきっかけがなくなってしまうという考え方です。失敗したときほど「そうか、こうすればよかったんだ」「よし、また成長できる」と考えれば、どんどん大きな人間になれるということ。

失敗に関しては、自分で免疫をつけていくしかないと著者は主張しています。誰だって、怒られるのはイヤだし怖いもの。ところが不思議なもので、3回怒られたら「怒られ慣れ」をしてくるというのです。つまりは免疫がついてくるということ。だからこそ、失敗するのが怖くてチャレンジできない人に対しては、「お願いだから、3回怒られて! 慣れるから!」といいたいのだそうです。

どんなプロジェクトも、トライ・アンド・エラー(挑戦して失敗する)の繰り返し。だからエラーしないと、一生その場所から動けなくなってしまう。でもエラー慣れすればするほど、トライできる数も増える。そう考えて、いっぱい失敗してほしいと著者は記しています。(116ページより)

本書に書かれていることを無理なく受け止めることができるのは、いうまでもなくテレビの現場での著者自身の経験が軸になっているから。そしてそれらは、あらゆるビジネスシーンに応用できるものでもあります。コミュニケーション能力を高めるために、手にとってみてはいかがでしょうか?

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年4月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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