「売れる営業」の鉄則は、説明ではなく「質問」に徹すること

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売れる営業の「質問型」トーク 売れない営業の「説明型」トーク

『売れる営業の「質問型」トーク 売れない営業の「説明型」トーク』

著者
青木毅 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
産業/商業
ISBN
9784534054876
発売日
2017/03/24
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「売れる営業」の鉄則は、説明ではなく「質問」に徹すること

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

従来の営業マンの役割は、いかに商品がお客様の役に立つかを、さまざまな方法によって説明することでした(つまり、「説明型営業」)。しかしそれは、インターネットが出現し、情報過多の時代にはそぐわないスタイル。これからの営業マンは、お客様のアドバイザー、コンサルタント、カウンセラーという立ち位置の仕事に変わる必要があるーー。

こう主張するのは、『売れる営業の「質問型」トーク 売れない営業の「説明型」トーク』(青木 毅著、日本実業出版社)の著者。豊富な飲食業・サービス業経験に基づき「質問型セルフマネジメント」を開発したという人物です。

この新しいスタイルの営業を、私は「質問型営業」と名づけました。これこそが21世紀に必要な営業です。(中略)営業としての役割を変え、スタンスを切り替えて質問を中心に話すことができれば、誰にでもできます。しかも、長い営業経験や、絶妙な説明の技術、会話を盛り上げる手法などは、ほとんど必要ありません。
それが「質問型営業」なのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、従来の「質問型営業法」と対比することによって、「質問型営業法」のメリットや可能性を解説しているわけです。第1章「『質問型営業』と『説明型営業』では、考え方・やり方がこのように違う!」から、いくつかを抜き出してみましょう。

商品説明について

質問型営業(以下、質問型)「お客様の欲求・ニーズを知りたい!」
説明型営業(以下、説明型)「商品の魅力を伝えたい」

—-説明型営業マンは、「商品」の説明に集中、質問型営業マンは、「お客様」のことに集中する。
(20ページより)

説明型営業マンは、「商品の魅力を伝えたい」と思っているもの。それは自分の商品の魅力を実感している証拠ですが、お客様はその商品に対する理解がない状態なので、まだまだ冷ややか。そんなお客様を見て、説明型営業マンは商品の説明で興味を引こうとするのだそうです。たとえば、以下のように。

説明型営業マン(以下、説明型)「今日は○○の商品について、ご案内にやってまいりました」
お客様「それについては、まだ、あまり興味がないのですが……」
説明型「皆様、最初はそのように言われるのですが、この商品の話を聞いていただくと驚かれます。お客様もきっとそのようになると思います」
お客様「そうですか……」
説明型「ではさっそく、商品の説明をしますね」
お客様「はあ……」
(20ページより)

たしかに、ありがちなケースかもしれません。お客様に商品の魅力を伝えれば、わかってもらえるはずだと思っているわけです。だからこの後も一生懸命に説明することに。しかし、そんな営業マンの姿を見て、お客様はますます冷ややかになってしまうわけです。当然、契約が成立するはずもありません。

一方、「お客様の欲求・ニーズを知りたい!」と思いながらお客様と接するのが質問型営業マン。当然、お客様の欲求・ニーズを聞かせてもらうための質問を先に投げかけることになります。

質問型営業マン(以下、質問型)「今日は○○の商品について、ご案内にやってまいりましたが、それらについてはどのように思っておられますか?」
お客様「それについては、まだあまり興味がないのですが…」
質問型「なるほど。では、その考えを聞かせてもらえますか?」
お客様「いいですよ。私には、まずやらなければいけないことがありまして…」
質問型「なるほど。詳しく聞かせてもらうことは可能ですか? たとえば、それはどのようなことですか?
お客様「実は…」
(22ページより)

このように質問型はお客様の現在の欲求・ニーズを第一に考え、それを聞くことからはじめるわけです。このとき重要なのは、お客様の意見を一切否定することなく受け入れること。提案したい商品の本題からそれていたとしても、あえて聞いていくことが大切だということです。なぜなら、それがお客様の欲求・ニーズだから。

そして話の流れで「自分の商品で解決できそうだ」とわかれば提案に持っていき、できなければ、あえて引き下がるいさぎよさを持つべきだということ。2つのケースのトークを見てみましょう。

<自分の商品で解決できる場合>
質問型「お客様のお話をおうかがいしますと、私どもの商品で解決できそうですが…」
お客様「それはどういうことですか?」
質問型「先ほどのお話の□□の解決になると思います」
お客様「なるほど」
質問型「一度、お話聞かれませんか?」
お客様「わかりました。では聞かせてもらいましょう」
(23ページより)

<自分の商品で解決できない場合>
質問型「お客様のお話をおうかがいしますと、まず、××を先に解決していただくほうがいいみたいですね」
お客様「そうですか」
質問型「それをまず解決いただいて、そこから私どもの商品についてお考えいただければ、と思いますが」
お客様「そう言っていただければ、助かります」
質問型「どれくらいで解決しそうですか?」
お客様「3か月ぐらいだと思います」
質問型「では、それぐらいの頃に、私からお電話させていただきますね」
お客様「わかりました。ありがとうございます」
(23ページより)

商品の魅力だけでお客様に提案を行う説明型営業マンに対し、質問型営業マンはこのように、お客様の欲求・ニーズに沿って提案を行うということ。

お客様が日常的に考えていることは、自身の欲求・ニーズの実現や、そのための問題・課題の解決策についてです。だからこそ、お客様の欲求・ニーズの質問から入るべきだという考え方なのです。(20ページより)

トーク内容の違い

質問型「どこまでも質問に徹しよう!」
説明型「どこまでも説明に徹しよう!」

—-説明型営業マンは、丁寧に説明することを目指す。質問型営業マンは、お客様に質問することを目指す。
(20ページより)

説明型営業マンが常に説明しようとするのは、説明すればお客様は商品についての欲求が高まると思っているから。ところがお客様からすると、それは説得されているように聞こえてしまうもの。

お客様「これって、本当にいいのでしょうか?」
説明型「お客様、先ほども申しましたように、この商品はお客様に最適の商品です」
お客様「そうですか」
説明型「なぜなら、この商品は使いやすく、重さも軽く、手軽に持ち歩けるからお客様にぴったりです」
お客様「そうかもしれませんね」
説明型「きっと、喜んでいただけますよ」
お客様「そうですか…」
(25ページより)

説明が習慣化している営業マンは、お客様のすべての言葉に対して説明を加えようとしてしまいがち。するとお客様は、曖昧に返答することしかできなくなってしまうのです。特にクロージングの場面などでは説明に力が入りすぎ、「説得」になってしまう傾向にあるとか。したがってお客様から「しばらく考える」「相談する」など、購入への判断を先送りされてしまうということ。

それに対して、どこまでも質問に徹するのが質問型営業マン。お客様自身が納得することこそが、商品購入へのいちばんの近道であることをわかっているのです。

お客様「これって、本当にいいのでしょうか?」
説明型「お客様はどう思われますか?」
お客様「確かに、使いやすそうですし、手軽さがいいと思いますね」
説明型「そう言っていただければ嬉しいですが、なぜそのように思っていただいたのですか?」
お客様「まず、操作が簡単なこと。そして、軽いことですね」
説明型「さすが、よくわかって頂いたようですね。お役に立てるようで嬉しいです」
お客様「こちらこそ、いいものをご紹介いただき、ありがとうございます」
(27ページより)

このように質問型営業マンは、お客様に考え、答えてもらうわけです。このことに関連して著者は、「人間は誰もが、自分の思ったとおりに動きたい」という特徴を持っていることに注目しています。つまり周囲がどういい聞かせようと、自分の思ったとおりにしか動かないということ。

「感じる・思う→考える→行動」の段階を経て、人は行動へと進んでいくということを、質問型営業マンはよくわかっているといいます。(25ページより)

扱われている説明型営業法と質問型営業法の事例やその内容の多くは、著者の実際の経験に基づいているのだとか。だからこそ、読者もそれを実践しやすいわけです。時代のニーズに即した営業スタイルを身につけたいのなら、ぜひとも読んでおきたい1冊だといえるでしょう。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年4月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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