実際の通貨とどう違う? いまさら聞けないビットコインの基礎知識

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実際の通貨とどう違う? いまさら聞けないビットコインの基礎知識

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』(大塚雄介著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、仮想通貨交換取引所「Coincheck」、そしてビットコイン決済サービス「coincheck payment」を運営しているという人物。ビットコインの第一人者として、本書の冒頭ではビットコイン・ブームの到来について触れています。

本書執筆時点(2017年2月)のビットコインの時価総額は169億ドル、1ドル=110円で計算すると、1兆8590万円になります。驚くべきはその伸び率で、1年前の57億ドルのおよそ3倍にまで膨らんでいます。2年前は30億ドルですから、この1年で急成長したことがわかります。
また、ビットコインのユーザー数も拡大の一途をたどっています。2017年2月時点のユーザー数は世界で1186万人、1年前は580万人ですから、およそ2倍。2年前は290万人なので、倍々ゲームで増えてきているわけです。
(「はじめに」より)

とはいえ、果たしてビットコインとはなんなのか、よくわからないという人も少なくないはず。手にとって触れることのできるものではないだけに、仕方のない話かもしれません。

そこで本書では、ビットコインと、それを支えるブロックチェーン、さらにフィンテック(ファイナンシャルテクノロジー)の広がりについて解説しているわけです。PART1「ビットコインって何なの?」から、基本的な部分を抜き出してみましょう。

実態を持たないバーチャルなお金

ビットコインは「仮想通貨」や「暗号通貨」のひとつですが、そうしたくくり方は、ビットコインが持つ一面を表すに過ぎないと著者はいいます。アナログの現金とは異なる「デジタル通貨」であり、特定の国に属さず世界中で通用する「国際通貨」であり、誰かが一元管理するのではなく、世界中の人たちの手で運用される「分散型通貨」でもあるというのです。

実体を持たないバーチャルなお金なので、手で触ることはできないものの、「ウォレット」と呼ばれるバーチャルな専用の財布に入れて持ち歩くことが可能。スマホやパソコンにウォレットのアプリを入れておけば、いつでもどこでも使うことができるのだそうです。

なおビットコインそのものはクラウド上に保管されているため、スマホのデータを完全に消去しても、ビットコインが失われる心配はなし。別のスマホやパソコンからログインしなおせば、ちゃんと残っているということです。(28ページより)

持ち運び自由の「電子データ」

デジタル通貨でもあるビットコインは電子データにすぎないので、どれだけ金額が大きくなっても、逆にいくら細かい金額に分けても、かさばる心配はありません。1円単位の支払いから、数百、数千万円単位の支払いまで、すべて同じウォレットを通じて行うことができるということ。

とはいえ、ビットコインをそのまま一般の銀行に預けることはできないのだとか。先にも触れたとおり、手に入れたビットコインはスマホやパソコンにダウンロードされるわけではなく、取引所が用意したクラウド上に預けっぱなしになっているわけです。

株を買っても株券の現物をもらうわけではなく、証券会社に預けたまま、売買の指示を出して実際の取引を代行してもらいます。同じようにビットコインの取引においても、アプリで指示を出すだけ。実際の送金は、ビットコイン取引所などが行なうのだそうです。(30ページより)

特定の国に属さない「国際通貨」

ご存知のとおり、日本国内では「円」ですべての支払いが行われ、米国内では「ドル」ですべての用事が済みます。各国の通貨は、その通貨を発行する国と切っても切れない関係にあるわけです。

日本銀行や米国のFRB(連邦準備制度理事会)、欧州のECB(欧州中央銀行)など、各国の中央銀行は通貨を発行し、発行済の通貨の量(マネーサプライ)をコントロールすることによって、金利や景気に影響を与えています。

一方、どこか特定の国や中央銀行にあたる組織が発行しているわけではないのがビットコイン。国によるコントロールを受けないため、その国に受け入れ体制さえできていれば、世界中どこでも同じように使うことができるということです。つまりそういう意味では、「真の国際通貨」といえると著者。(32ページ)

「民主的な運用」と「分散型ネットワーク」

ビットコインは特定の国が発行・管理していない代わりに、ネットワークに参加している人たちが主体となって、自分たちの手で運用しているもの。世界中のいたるところで1日24時間、365日行われている取引を、参加メンバーがお互いに承認し合うことによって「取引の正しさ」を担保しているのだといいます。

それを支えているのは、「P2P(Peer to Peer)ネットワーク」による分散処理システム。中央のサーバーで集中管理するのではなく、ネットワークにつながれたコンピューターが取引の正しさを商品するため、世界中で稼働しているのだそうです。

誰かが一元的に管理するのではなく、メンバー相互の承認によって運営されているということ。つまり民主的な通貨であり、中央集権型のクライアント・サーバー方式とは正反対の「分散型通貨」ともいえるということ。(33ページより)

ビットコインは「暗号署名入り」

現金は所有できますが、ある特定の一万円札の持ち主が自分だと名乗ることは不可能。お札に所有者の名前が書いてあるわけではなく、「この一万円札」も「あの一万円札」も誰のものでもないからです。

たまたま手にしたその人が、一時的に「一万円という価値」を所有したというだけのこと。ですから、もしその一万円札を盗まれて使われてしまったとしても、「この一万円札は自分のものだから返して」という理屈は成り立たないわけです。同じように、自分で働いて得た一万円も、投資で儲けた一万円も、ギャンブルで買った一万円も、すべて同じ一万円だということになります。

もちろん「暗号通貨」であるビットコインも、「名無しの権兵衛」であることは同じ。しかし特徴的なのは、「電子署名」という暗号技術によって、現在の所有者に無断で送金することができないようになっている点だといいます。たとえばAさんが所有する1ビットコインは、Aさんの許可なく、勝手にBさんのものにすることはできないというのです。

しかもそれだけではなく、ビットコインには過去のすべての所有者の名前が記録されているのだとか。つまり「このビットコインは最初はAさんの手元にあり、次にBさんの手に渡り、現在はXさんのものである」という所有者の遍歴がわかるようになっているということ。そのため、ビットコインがどういう取引をして現在に至ったのか、必要があれば、あとからさかのぼって確認することができるというのです。

こうした性質があるからこそ、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、マネーロンダリングのような不正操作には悪用されにくいわけです。(34ページより)

ビットコインを使うメリットは? 

1.投資対象として

一般の人がビットコインを使うメリットは、現状では大きく分けて2つあり、そのひとつが投資対象としての利用なのだそうです。

ビットコインの価格は常に変動しているため、下がったときに買って上がったときに売れば、その差額が儲けになるのは、他のあらゆる投資と同じ。短期的に見れば、円ドル相場などとくらべて値動きの激しいビットコイン相場は先読みがしづらいものの、ビットコイン市場そのものがまだまだ成長過程であるため、長期的に見れば将来的な値上がりが期待できるというのです。(60ページより)

ビットコインを使うメリットは?

2.送金手段として

ビットコインを使うメリットの2つ目は、国をまたいでお金を動かすこと。海外送金や海外決済の手段として優れているということです。

たとえば日本や米国に出稼ぎに来たフィリピンの人たちが母国に送金するという場合、銀行を経由すると手数料が高く、時間もかかるもの。コンビニATMやスマホで送金できるセブン銀行などを利用した場合、1万円送るのに990円、5万円送るのに1500円、10万円送るのに2000円といった手数料がかかるわけです。

しかし、そういうときにビットコインを使うと、とても安い手数料で素早く送金することが可能。1%ほどの手数料で瞬時に送金が完了するため、1000円単位でも気兼ねなく送金できるため、送る人も送られる人もハッピーになれるというのです。(78ページより)

もちろんここでご紹介したことは、ビットコインのほんの一側面にすぎません。しかし、可能性の一端は感じることができたのではないでしょうか。本書を通じてさらにビットコインの仕組みからルールまでを深く理解すれば、投資などについての考え方が変わるかもしれません。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年4月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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