『スパイクマン地政学』 ニコラス・スパイクマン著

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スパイクマン地政学

『スパイクマン地政学』

著者
ニコラス・スパイクマン [著]/渡邉 公太 [訳]
出版社
芙蓉書房出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784829507049
発売日
2017/01/20
価格
2,700円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『スパイクマン地政学』 ニコラス・スパイクマン著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

真珠湾直後に戦後予見

 アメリカ国際政治学の古典『世界政治と米国の戦略』(一九四二年刊)初の邦訳である。著者スパイクマンは、イエール大学の国際政治学者で、マッキンダーと並んで、地政学の祖とも見なされている。本書は、アメリカが置かれている地政学的条件について考察し、同国の世界戦略に何が必要なのかを探っている。真珠湾攻撃のわずか三か月後に出版され、政策決定者にも大きな影響を与えたと言われている。抄訳だが、核心部分は網羅されている。

 アメリカは建国以来、孤立主義、介入主義いずれの外交政策を取るべきか議論を続けてきた。日米開戦によってこの対立は解消されたが、当時国内には、まだ孤立主義を望む風潮もあった。著者はこれを「誤った考え」だと戒め、戦争終結のためには、アメリカがヨーロッパとアジアで大規模な軍事行動を遂行しなければならないと主張した。また、第二次大戦後も勢力均衡が国際秩序の根幹になると予見し、引き続き「平和に関与し続ける」ことが必要だと論じている。

 著者は、ユーラシア大陸の「ハートランド」であるソ連(ロシア)やドイツが、アメリカにとって最大の脅威であると考えていた。そして、これに対処するためには、戦後日本との提携が必要になると説いた。真珠湾攻撃の勝利に酔い、大戦後への確たる見通しを持たなかった日本と対照的に、アメリカでは早くも、戦後構想が具体的に議論されていたのである。

 本書が書かれたのは、第一次世界大戦後の平和が崩壊した、いわば「ポスト大戦後」の始まりの時期であった。一つの時代の終わりを意識して書かれた本書の議論は、「ポスト冷戦後」の開始を目の当たりにしている我々にとっても、示唆に富む。トランプ大統領は、孤立主義に回帰するのか。「ハートランド」ロシアの復権や中国の台頭に、アメリカはどのように対処するのか。今後の国際情勢を考える上で、様々なヒントがちりばめられている。渡邉(わたなべ)公太(こうた)訳。

 ◇Nicholas John Spykman=1893~1943年。20世紀の米国を代表する外交戦略家、地政学者。

 芙蓉書房出版 2500円/

読売新聞
2017年4月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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