顔ニモマケズ 水野敬也が取材した「見た目問題」の人々

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

顔ニモマケズ

『顔ニモマケズ』

著者
水野敬也 [著]
出版社
文響社
ISBN
9784905073642
発売日
2017/02/15
価格
1,566円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

醜形恐怖に陥った著者が真摯に向き合う9人の現実

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 年とともに人の外見が気にならなくなってきた。気になるのは清潔さや行動のほうだ。その人の美しさは見ただけではわからない、と今では断言できるようになった。とは言うものの、アンチエイジングに興味はあるし、ダイエットを決意しては挫折する日々なのは情けない限りだ。

 本書は病気や障害によって顔や外見に症状を持つ9人を取材している。日常生活に支障をきたさなくても、出会ったときに最初に目が行く「顔」が普通の人と違っていたら、驚くのは仕方ないことだと思う。

「見た目問題」はデリケートだ。子どもなら遠慮なく「変だ」と言うだろう。大人はさりげなく避けるかもしれない。長い間苦しみ、今でも解決しているとは言えない世間との付き合い方や自分の姿勢を、本書では率直に語っていく。

 生まれつきのリンパ管腫で大きく顔が曲がっている男性。動静脈奇形でマスクが手放せない女性。網膜芽細胞腫で片目のない青年。口唇口蓋裂の同人漫画家。全身型円形脱毛症で母親になった女性。アルビノのパラリンピック代表選手。単純性血管腫で顔に痣を持つ営業マン。ロンバーグ病という進行性の顔面片側萎縮症の手術に失敗してしまった女性。顎骨や頬骨が未発達な状態で生まれてしまうトリーチャーコリンズ症候群の青年。彼らの障害を真正面から捉えた写真も掲載されている。

 彼らの話が腑に落ちるのは、辛い経験を乗り越えて大丈夫、とはなっていないからだ。悩みは今でも続いている。これからも悩み続けていくだろう、という綺麗ごとでは済まされない現実が胸に響くのだ。

 著者の水野敬也は『夢をかなえるゾウ』や『人生はニャンとかなる!』を著した人気作家。だが若い頃、醜形恐怖のために心療内科に通うまで苦しんだという。だからこそ真摯に取材者と向き合っている。彼らはみんなかっこいい。その姿をぜひ見てほしいと思う。

新潮社 週刊新潮
2017年4月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加