中毒性の高いフェイク・ミステリー

レビュー

3
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出版禁止

『出版禁止』

著者
長江 俊和 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784101207414
発売日
2017/03/01
価格
637円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

中毒性の高いフェイク・ミステリー

[レビュアー] 図書新聞

 著者の長江が、掲載を見送られたといういわく付きの原稿を入手する。そのタイトルは「カミュの刺客」。内容は、若橋呉成という執筆者が、かつて起きたドキュメンタリー映像作家心中事件の真相に迫るというもの。『出版禁止』は、その「カミュの刺客」を全文掲載するという体裁を取っている。いわゆるフェイク・ミステリーであり、エピゴーネンも多いジャンルだが、長江の戦略は他の追随を許さない。謎の提示、謎の開示、謎の放置という選択が、読者の好奇心を直接刺激するためだけに、なされているからだ。多くの謎は放置されたままであるが、この不親切さは、期待を裏切られたいという読者の欲望の反映でもある。固有名詞のアナグラム解読など、憶測が憶測を呼ぶ迷宮に入り込んだらもう抜け出せない。中毒性の高い一冊だ。(3・1刊、三四〇頁・本体五九〇円・新潮文庫)

図書新聞
2017年4月1日号(3297号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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