西洋史・西洋文明の中の「ケルト」
[レビュアー] 図書新聞
日本でも文学・芸術からサブカルチャーに至るまで多大な影響を与え続けている幻想的なケルト文化。だが、本書はそうしたブームを後追いするような概説書ではなく、歴史的文脈を詳細に再検討していくことを目指した、多岐にわたる論考集だ。キリスト教文化との比較、「ケルト人」の定義、アーサー王伝説の広がり、アイルランドの国策としての「ケルト復興」についてなど、これまで一般的なイメージをかたち作っていた文化状況が民俗学的アプローチによって鮮やかに解体されていくだけでなく、イギリスやフランスの歴史についても詳細にまとめられていて面白い。もちろん、これらの批判はケルト文化の魅力を損なわせるものではない。歴史を知った上でファンタジーを楽しめばよいのだ。(12・19刊、三九二頁・本体一二〇〇円・講談社学術文庫)