伊賀大介は『歩きつづけるかぎり 怒髪天 増子直純 自伝』を読んで、アニキは一日にして成らずと気合いを入れ直す

レビュー

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歩きつづけるかぎり 怒髪天 増子直純 自伝

『歩きつづけるかぎり 怒髪天 増子直純 自伝』

著者
増子直純 [著]
出版社
音楽と人
ISBN
9784903979199
発売日
2014/01/13
価格
2,500円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

伊賀大介は『歩きつづけるかぎり 怒髪天 増子直純 自伝』を読んで、アニキは一日にして成らずと気合いを入れ直す

[レビュアー] 伊賀大介

伊賀大介
伊賀大介

 アニキ‼ この、たったカタカナ3文字を口にするだけで、背筋がビッと伸びるような気分になったり、ガキの頃観た夕焼けが蘇ってくるのは何故だ? そりゃ俺が次男だから? って、ソレを言っちゃオシマイだ。というか、関係ない。
 北島三郎御大の名曲「兄弟仁義」を聴いたり、究極のアニキ・ムービー『狂い咲きサンダーロード』のジンさんを観たりすりゃ、気分はいつだって水谷豊か、哀川翔か、はたまた桜金造か、ともかく弟分の気持ちに浸る事が出来る。
 そう、男は誰しも心の中でいつも「アニキ」を探し続けていたい生き物なのだ‼ と、何故こんなに「アニキ感」に恋しくなっているかと言われりゃ、それは勿論、衣裳を手掛けている、宮藤官九郎さん作演出舞台・ステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』の所為(年末まで絶賛公演中‼)。
 そこで瑛太君演じる青ダボシャツのヤクザ・小鰭光の兄貴分・金目鯛次郎に扮し、赤ダボシャツに腹巻き姿で仁義切ったり、ゴキゲンなソウルナンバーの数々を唄い上げるのが、パンクバンド・怒髪天のフロントマンで、ロック界の「アニキ・オブ・アニキ」増子直純さんその人である‼
 ただでさえ、俺は弟分アンテナが感度良好過ぎるのだが、初見のその瞬間から、今の日本で職業欄にアニキって書けるのは、水木一郎兄ィとこの人だけなんじゃないか⁉ と、ハートを撃ち抜かれ、アッという間に自伝も読破したのだが、この『歩きつづけるかぎり 怒髪天 増子直純 自伝』ってやつの破壊力がヤバ過ぎた。
 本宮ひろ志モノを自で行きつつ、野性味がハンパない少年時代(ちょい前にTBSラジオたまむすび金曜で披露されてたので是非)や、THISIS初期衝動! なバンド開始時代や、リアル北海道版カオルちゃん(竹内力さんのね)な、最恐な伝説を撒き散らしていた青モヒカン&航空自衛隊時代など、「誰が一番強いんかハッキリさせたらいいんやby前田日明」な話が大好物な人にはたまらないのだが、本書を只のバンド青春譚と捉えてしまうと、その「アニキ感」の本質には到底辿り着かない。刹那や衝動のエピソードをロックとするのは簡単だが、ここで増子アニキは「キープ・オン」の精神が何よりもパンクだ、と説く。
 バンドがドン詰まりになり、活動休止になってからの三年間にサラリード・ワーカーを勤めた事により(包丁実演販売時代の話も最高‼)、歌う事の意義や、誰の為に歌うかが見えてきた、と語るOVER40からの話が、不惑手前のオトナにとっては尋常じゃなく沁みてくるのだ。
「アニキ感」。人はそれをカリスマの為せる特殊技能だと思うかもしれないが、市井の人々と共に笑ったり、悔しがったり、毎日メシ食うために歯くいしばって生きてきた一人の男だからこそ、あの厳しさと優しさが同居した「howmany イイ笑顔」が出来るのだ! 「アニキは一日にして成らず」と気合いを入れ直し、俺は再びアニキを求める旅に出たのでありました。
 よし! 旅のお供は「ドリーム・バイキング・ロック」だっ‼

太田出版 ケトル
vol.34 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

太田出版

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