『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』 奥野修司著

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魂でもいいから、そばにいて

『魂でもいいから、そばにいて』

著者
奥野 修司 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784104049028
発売日
2017/02/28
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』 奥野修司著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

亡き人との「再会」記録

 淡々と記録される悲しみの深さに、読み進める手が幾度も止まった。それでも読まねばならないという思いに駆られ、1ページずつを噛(か)みしめていく。様々な思いが胸に去来する。近しい人を突然亡くしたとき、人はいかなる喪失感を胸に抱くものなのか。そして、そのような人々が裡(うち)に秘めた物語に寄り添い、書き留めるとはどのようなことなのか――。

 本書はノンフィクション作家の奥野修司氏が、東日本大震災の被災地で聞き続けた〈「亡き人との再会」ともいえる体験〉をひと連なりの旅のように描いた作品である。

 副題に「霊体験」とある。あの震災以来、被災地ではそうとしか呼べないような、多くの不思議な体験が語られてきた。津波で流された夫に夢の中で抱きしめられ、温(ぬく)もりをたしかに感じたと語る妻。失った子供のオモチャが動いたと話す両親。鳴らないはずの携帯に残された着信……。

 何かの偶然や錯覚、あるいはリアルな夢だったのかもしれない。だが、著者は一人ひとりに繰り返し話を聞き、遺族が語る物語と、語られることによる物語の変容に耳を傾けていく。

 ある日、不思議な体験をした人が、夢を見始めるというエピソードが目立つ。彼らの多くは「私はあなたの近くにいる」という死者からのメッセージを夢の中で受け取り、自らが〈納得できる物語〉を模索し始める。

 その過程を通じて著者が描き出すのは、それらの「物語」がある人々にとって、「いま・ここ」で生き続けるためにどうしても必要なものであったということだ。

 そうすることで悲しみが癒されるわけではない。しかし、そこには深い悲しみを悲しみのままに受容し、唐突に切れてしまった人との物語を、どうにかして紡ぎ直そうとした人々の懸命な姿がある。その言葉に静かに寄り添った著者の眼差(まなざ)しは優しく、真摯(しんし)だった。

 ◇おくの・しゅうじ=1948年大阪府生まれ。2006年、『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で大宅賞。

 新潮社 1400円

読売新聞
2017年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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