【聞きたい。】大井実さん 『ローカルブックストアである』

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ローカルブックストアである

『ローカルブックストアである』

著者
大井実 [著]
出版社
晶文社
ISBN
9784794969514
発売日
2017/01/25
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】大井実さん 『ローカルブックストアである』

[レビュアー] 産経新聞社

 ■小さな売り場から地域へ

 生まれ故郷の福岡市に広さ50平方メートルに満たない総合書店「ブックスキューブリック」を開業したのが平成13年。39歳にして素人同然で始めた店は、書店の淘汰(とうた)が進む時代の荒波を乗り越えて町に溶け込んでいく。そんな自らの15年の歩みを振り返った一冊だ。

 「読書って習慣なんですよね。だから近所に書店があるのは大事。SNSの中で鬱屈しているのなら、外には豊潤な本の世界があることを知ってほしい」

 けやき並木を望む店のショーウインドーを彩るのは定番の雑誌。料理や旅行の本からビジネス、文芸書までジャンルを網羅し、新書・文庫も置く。いたずらに趣味を押しつけず「話題の新作から定番までバランス良くそろえた『小さな総合書店』」には、自らが子供のころ親しんだ町の本屋のイメージも投影されている。

 活動はやがて小さな売り場から地域へと広がる。毎年約6千人が集う古本市を中心にした本のお祭り「ブックオカ」を企画。カフェやパン工房を併設した2号店はトークイベントや展覧会でもにぎわう。見えてくるのは、人々を心地よく結びつける「場」としての書店の可能性だ。

 活動の原点に、20代のころにイタリアの町で見た風景がある。細い路地で、広場で、いつも人々は楽しそうに会話を交わしていた。

 「人と人との距離の取り方が絶妙で、それにはバールのような個人商店が果たす役割が大きい。自分も店を町の人がつながるホットな場所にしたかった」

 出版不況やネット書店の台頭など逆風は強い。でも「人生は解釈次第」と悲観はしていない。「今、ネット上の情報量はとてつもない。膨大な情報に一定のフィルターをかけ、フレッシュでうま味のある“有機野菜”のような本を届ける-。そんなコンパクトな町の書店はむしろ時代に合っている」(福岡ブックスキューブリック/晶文社・1600円+税)

 海老沢類

  ◇

【プロフィル】大井実

 おおい・みのる 昭和36年、福岡市生まれ。同志社大文学部卒。ファッション関係のショーや現代美術の展覧会の企画に携わった後、福岡市のけやき通りに「ブックスキューブリック」を開業。平成20年に2店目の箱崎店を開いた。

産経新聞
2017年4月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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