いきなりパワーポイントを立ち上げてはいけない? 「資料作成」で気をつけなければいけないこと

レビュー

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できる人が絶対やらない資料のつくり方

『できる人が絶対やらない資料のつくり方』

著者
清水久三子 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784534054814
発売日
2017/03/16
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

いきなりパワーポイントを立ち上げてはいけない? 「資料作成」で気をつけなければいけないこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「資料作成は総合格闘技」だと主張するのは、『できる人が絶対やらない資料のつくり方』(清水久三子著、日本実業出版社)の著者。外資系コンサルティングファームで、コンサルタントとしてさまざまなクライアント企業のプロジェクトで資料をつくり、プロジェクトマネージャーとしてメンバーの資料の確認・修正を行なってきたという人物です。

資料作成は非常に多くのスキルの合わせ技です。単に文章や図解がうまいだけでは、資料を提出する相手の期待や、その資料を使うシーンにふさわしいものができるとは限りません。
相手の期待値を把握するスキルや、それに基づいて必要な情報を取捨選択するスキル、情報を論理的にまとめるロジカル・シンキングやアイデアを考える思考力、考えたものを理解しやすい表現にするスキルに加え、作成時間や提出までのタイムマネジメント、伝わりやすい説明の仕方など、非常に多岐にわたるスキルが必要なのです。(「はじめに」より)

これこそ、資料作成が総合格闘技である理由。とはいえ、実際には見よう見まねでつくることも少なくないはず。また、体系的に教えてもらう機会も少ないため、そもそもしっかりとしたつくり方を知らないという人も多いことでしょう。ちなみに勝つために必要なのは、基本的なルールを理解していることに加え、「これをやってはいけない」というNGパターンを理解しておくことなのだと著者はいいます。

そのような考え方に基づいて書かれた本書の第1章「資料の目的をはっきりさせる」から、基本的な部分をすくい上げてみましょう。

いきなりパワーポイントを立ち上げない

資料をつくるとき、いきなりパワーポイントを立ち上げてはいけない。著者がそう主張することには理由があります。画面に集中してしまうことで、「とりあえず目の前のスライドを仕上げる」「資料の枚数を増やす」ことが目的になってしまいがちだから。では、どのような手順で進めればいいのでしょうか?

1. 「目的」をはっきりさせる
2. 「メッセージ」を明確にする
3. 「ストーリー」をつくる
(10ページより)

著者によれば、これが資料作成における3つの基本。これらを踏まえることが大事で、しかも、ここまではすべて手書きで進めるのがいいそうです。なぜなら手書きのほうが、形式にとらわれず、自由に発想ができるから。これら3つの手順すべてが明確になったときに、初めてパワーポイントを立ち上げ、一気に資料を仕上げるべきだというわけです。

3つの手順のなかでも、最初に取り組むべきなのは、資料の目的をはっきりさせること。企画書であれ提案書であれ、あるいは議事録であれ、資料には必ず目的があるもの。「誰に、どんな行動をとってもらいたいのか」を明確に伝えることが、資料のゴールだということです。

そのため、仕事ができる人がつくる資料は、目的が明確だと著者はいいます。つまり、その文書を読んだ人がどんなアクションを取ればいいのかが、わかりやすく示されているということ。なお資料の目的を整理するには、次の3段階で考えるとわかりやすくなるそうです。

1. 相手にどんな行動をとってもらいたいのか(行動)
2. そのために相手に何を理解してもらいたいのか(理解)
3. そのために相手をどのような心理状態にすべきか(感情)
(12ページより)

たとえば取引先へ企画提案に行くとしたら、1度目の訪問の目的は、その企画に興味を持ってもらい、社内で検討してもらうことになります(行動)。そこで、まずは企画の概要と、相手が感じるメリットを中心とした簡単な資料をつくり、企画の内容をわかりやすく伝えることが必要(理解)。しかし、まだ企画が進行するかどうかわからないこの段階で、細かく書かれたガントチャート(進行スケジュール管理表)を見せようものなら、相手はとりかかる前から面倒な気分になってしまう可能性があります(感情)。

資料の目的をしっかり意識しないと、このように「求められていない資料」をつくってしまうことになるわけです。しかし「行動」「理解」「感情」の3つに分けて考えると、資料の目的がわかりやすくなるということ。(10ページより)

資料の使われ方を意識する

限られた時間で効果的な資料をつくるためには、資料の「使われ方」を意識することが大切。自分が会社のために使う時間は、そのまま会社のコスト(人件費)になります。資料をつくる際、常にすべての情報を盛り込み、さまざまなテクニックで加工するような全力投球をしていたのでは、コスト感覚がないといわれても仕方がないということ。資料の使われ方によって、力配分を考えるべきだというのです。

例を挙げましょう。上司から「実際にやるかどうかわからないけれど、1時間程度、みんなで商品のキャンペーンについてざっくばらんにアイデアを出し合いたい」といわれたとしたら、そのミーティングではどのような資料が必要でしょうか?

目的が「アイデアを出し合う」ことなので、ここで求められているのは、みんなで自由に発言し合うこと。そのため資料を用意するとしても、メモ書きや箇条書き程度のもので十分だということになります。

ところがそんなとき、何時間もかけて調査した膨大な20枚ものデータ資料を出したとしたら、どうなるでしょうか? 当然ながら、資料を読み込むだけで参加者の時間を使ってしまうことになってしまいます。よかれと思って資料をつくり込んだとしても、みんなの時間を奪うためマイナスになってしまうということ。ここでも、資料の目的を意識していくことが大切なのです。

ただしこのようなミーティングで求められる資料も、段階を追うごとに種類や重要度が変化していくもの。最初はざっくばらんなアイデア出しだったミーティングも、もしそこで「新しいキャンペーン企画を進めよう」ということになったら、現状分析や競合の調査などが必要になってくるわけです。そのため二度目の会議では、調査報告のような資料が求められることになります。

調査結果を分析したのち、その企画を進めることになったとしたら、次は企画書や提案書が求められます。さらには「誰がいつまでになにをするか」のアクションを伴った、より精密な行動計画資料も必要になるでしょう。そして最終的には、「その企画を行なった結果、どのような効果があったのか」「反省点や改善点はなかったか」などの活動報告書に結実していくわけです。

このように、会議の目的によって、資料の使われ方や求められる精度は変わっていくということ。的外れな資料をつくって、無駄な長時間労働をしないようにしないように心がける必要があるのです。(16ページより)

いい前例を下敷きにする

資料は常にゼロからつくるのではなく、いい前例を下敷きにして効果的に作成すべきだと著者。上司や先輩がつくった資料を読み込んで参考にすれば、資料づくりの時間を短縮できるわけです。そればかりか、「わかりやすい資料」がどういうものかを見極めるスキルが身につき、一生の財産になるといいます。

ただし先輩がつくった資料を参考にするとき、ただコピー&ペーストをするだけだと、自分で考える力がいつまでたっても身につかないでしょう。それに、ひとつの資料だけを参考にするのではなく、いろいろな資料を見て、自分なりのフォーマットをつくるのがいいと著者は記しています。

資料を読みくらべて見ると、「わかりやすい資料」と「ダメな資料」があることに気づくそうです。そして資料を「見る目」が養われてくると、「伝わる資料」「伝わらない資料」を一目瞭然で判断できるようになるといいます。そこで、自分の専門分野の資料に関しては、社内で手に入るものは一度すべて読んで見ることを著者は勧めています。

ちなみに「わかりやすい資料」かどうかを見分けるコツは、アジェンダや目次といわれている部分を見ること。目次をパッと見て全体像がつかめる資料は、わかりやすい資料だということです。逆に、目次を見ても意味がよくわからない資料は、本文を見てもだいたい論理が破綻しているといいます。理由は明白で、目次は資料を作成した人の考え方を表現しているから。

さらに、「これはわかりやすい」という表現があったら、ピックアップしておくことも大切。「このスケジュールの書き方はわかりやすい」「この表の並べ方は説得力が増す」などと感じた表現方法については、「なぜわかりやすいのか」を繰り返し考え、自分の物にしていくべきだという考え方です。(20ページより)

以後も資料作成に際して「やってはいけない」ことが、具体的にわかりやすく解説されています。つまりは、とても実用的な内容。「実は資料のつくり方を、きちんと教わったことがない」という方は、読んでおくべきかもしれません。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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