『1日10分 「じぶん会議」のすすめ』
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1日10分の「じぶん会議」を習慣化して、思考を整理しよう
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
忙しい日常のなかで、”自分自身”のことについてじっくり考える時間を持つことはなかなか困難。考えられたとしても、「あれもこれも」と頭のなかにいろいろなことが浮かんでは消え、ごちゃごちゃになってしまったりもするものです。
だからこそ、毎日の忙しさにくさびを打ち、いったん立ち止まろうと提案しているのは『1日10分 「じぶん会議」のすすめ』(鈴木進介著、WAVE出版)の著者。
「そもそも自分がなにをしたいのか」を忘れてしまうのは、仕事においてもプライベートにおいても、自分で手綱を握っている実感が持てないから。そのため結果的には人生に対し、「これでいいのか自信がない」「先が見えず、すっきりしない」などの疑問を抱いてしまうことになるというのです。
大切なのは、ただ忙しいだけの人生や、他人の目を気にした人生を、「本当の自分の人生」へと軌道修正すること。そのためには、毎日10分間だけでいいから、自分と向き合う「じぶん会議」の時間をつくり、自分について少しずつ考えるべきだという考え方です。
じぶん会議に必要な時間は1日10分です。
たった10分なら、ほぼ全員が確保できるはずです。
自分の本当の気持ち、やりたいこと、そのために今できることなどについて考えます。
テーマは自分です。しかも、ぼーっと考えるのではなく、会社の会議さながら、真剣に、集中して、時間を決めて考えます。
(32ページより)
この会議を習慣化(定例化)していくと、不安やモヤモヤ感を確実に解消することができるのだそうです。とはいえ実行するとなると、さまざまな不安や疑問に直面するかもしれません。そこで第6章「じぶん会議が行きづまらないコツ」中の「じぶん会議のQ&A」から、いくつかの項目を抜き出してみたいと思います。
じぶん会議の時間を確実につくるには?
Q:日々の仕事が忙しく、じぶん会議の時間が思うように取れない。確実に時間を作るにはどうすればいいでしょうか?(175ページより)
この問いに対して著者は、「じぶん会議の枠をあらかじめ取っておきましょう」と答えています。簡単なことで、週の初めに手帳などにじぶん会議の時間をあらかじめ記入しておくということ。そうしたうえで、あとから予定を入れていけば、じぶん会議の時間が優先的に取れるようになるというわけです。
たしかに「空いた時間にじぶん会議をしよう」と漠然と考えていたとすると、結局は目先の仕事の予定を優先してしまうことになるでしょう。だとすれば、じぶん会議を仕事の会議と同じくらい重要なものととらえ、スケジュール管理していけばいいということです。
時間が取れないときは?
日によって時間が取れないときがある。そんなときはどうすればいい?(177ページより)
著者がじぶん会議を「1日10分」という長さに設定しているのは、じっくり考えるには、少なくともそれくらいの時間が必要だろうと考えているから。ただし質問にもあるように、仕事の状況などによっては思うように時間が取れないという場合もあるでしょう。
でもそんなときは、たとえば時間を短縮したり、そのぶん翌日の会議時間を伸ばすなどして調整すればいいだけのこと。「毎日10分考えなければいけない」とルールを自分に強制するのではなく、あくまで「1日10分でできる」という前向きな気持ちで向き合う。それこそが、じぶん会議を継続していくためのポイントだといいます。
行きづまったら時間を延長すべき?
Q:行きづまったときは時間を延長したほうがよいですか? それとも明日以降に持ち越したほうがよいですか?(178ページより)
じぶん会議は、答えがすぐには出ないものや、正解がないことについて考える場でもあるのだそうです。いいかえれば、行きづまることがあってもそれは当たり前だということ。そこで、妙案が浮かびそうもないときや、「ダメだ」「できない」といったネガティブな発想になってきた場合には、いったんリセットして日を改めるべきだといいます。
じぶん会議について重要なのは、「1日10分でいいので立ち止まる時間をつくる」ということ。つまり立ち止まって考えることができたのであれば、答えを持ち越したとしてもまったく問題ないという考え方です。
なお「1日10分」はあくまでも目安なので、頭が気持ちよく回転していたり、アイデアが湧いてくるようなときは、必ずしも10分で終わらせる必要はなく、継続してもいいのだとか。
また、週末や週初め、月初めなどの節目に、特別版のじぶん会議を行うというアイデアも。それを重要会議と位置づけ、あらかじめ30分〜1時間程度の時間をとっておくことによって、いつもより多く自分に質問したり、選択肢を出してみることができるわけです。
会議で結論が出なかった場合は?
10分のじぶん会議で結論が出なかったとき、途中まで考えたことを忘れないようにするコツはなんですか?(179ページより)
この質問に対する答えもいたってシンプル。つまり考えたことは、できるだけメモにとっておくようにするべきだということです。この点に関しても、じぶん会議は通常の会議となんら変わらないといえるでしょう。
翌日以降も引き続き考えるのであれば、メモをクリアフォルダなどに入れておくと整理しやすくなることに。スマホの、エバーノートなどの記録アプリを利用するのもいいようです。ただし著者が勧めているのは、基本的に手書き。手を動かして書くことによって、脳が刺激され、書いていること(メモの内容)に対する注意力や集中力が高まるからだといいます。
ちなみにメモに書き出すのは、思考を視覚化するためだと著者はいいます。悩んだり、迷ったり、頭のなかがモヤモヤするのは、頭のなかだけで考えている(考えようとしている)から。そんなときメモに書き、目に見える形にすることで、悩みの構造が理解でき、解決策もイメージしやすくなるということです。また、メモにすることで、新たな気づきが得られることも。
通常の会議では周囲の意見も重要ですが、メモに集中しすぎると話を聞くことがおろそかになってしまうことがあります。しかし、じぶん会議の場合は話を聞く相手がいないわけですから、そのぶんメモに集中し、ひらめきを得やすいともいえそうです。
ロジックツリー? マインドマップ? 箇条書き?
思考を整理していく方法は、ロジックツリーがいいか、マインドマップがいいか、それとも箇条書きがいいか?(180ページより)
箇条書きがいいそうです。思考を整理したり、ベビーステップをToDoリストに落とし込むことを目的とするうえで、ロジックツリーやマインドマップのように細かく書き込んでいく必要性はないというのがその理由。
とはいっても、箇条書きした項目を矢印で結ぶなど、図式化したほうがわかりやすいというケースもあるはず。そんなときは、その都度アレンジしていけばOK。大切なのはメモをきれいに書くことではなく、思考の整理の補助としてメモを利用すること。方法論にとらわれすぎると、目的が変わってしまうということです。
「集中して考える習慣をつける」ことが目的なのですから、じぶん会議は決して難しいものではないでしょう。それどころか、気軽に、すぐはじめることができるはず。いずれにしても、1日24時間のうちほんの10分間を活用するだけなら効率的に時間を使えそうです。興味のある方は、本書を参考にしながら試してみてはいかがでしょうか?
(印南敦史)