『ことばのしっぽ』 読売新聞生活部監修

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ことばのしっぽ 「こどもの詩」50周年精選集

『ことばのしっぽ 「こどもの詩」50周年精選集』

出版社
中央公論新社
ISBN
9784120049651
発売日
2017/03/22
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ことばのしっぽ』 読売新聞生活部監修

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

「こどもの詩」選ぶ変遷

 「お母さん かんじとか かたかなは書けるけど 何か言うときは ぜんぶ ひらがななんだね。」こういう新鮮な驚きをくれるのは、決まって子供の何気ない言葉だ。彼らは言葉を覚えたてで、音と字をくっつけるのに大変だ。「れ」をカンガルーみたいだと思ってみたり、「ねがいごと」と「ならいごと」を間違えたり。

 歴代選者は、それぞれ違った風合いのものを選んでいる。山本和夫さんの頃は、けっこうお行儀良い「詩」になっているものが多く、昭和の香りがする。川崎洋さんの代になると、子供らしい「発見」の詩が増え、それに驚いて見せたり、拍手喝さいしたりするお茶目(ちゃめ)な選評がつくようになる。選評で詩に「落ち」がつくこともある。あと、けっこう川崎さんは涙もろいらしい。長田弘さんの代になると、言葉に独特の「音」と「字」のハーモニーがあるものが多く選ばれるようになる。多くの詩は叙述的で、呟(つぶや)きが訥々(とつとつ)と溢(あふ)れたような真実味も感じられる。

 「がっこうのしんぞうのけんさで ひっかかっちゃった。にどめ、 またひっかかった。さんどめ、 びょうきがみつかった ままがなみだをながしていた まま、よわく、うまれてきて ごめんね」。こんな詩に、長田さんは、「きみの『ごめんね』は『まますきだよ』という言葉にきこえる。じぶんをはげます言葉のやさしさ。」と書く。少し斜め前にしゃがみこんで、顔を覗(のぞ)いて声をかけるようなコメントだ。

 個人的には平田俊子さんの選が好きだ。子供が闊歩(かっぽ)していく後ろを、ちょっと離れてついて歩いて、微笑(ほほえ)んでいるような選評だ。ふうん、と感心してみたり、お母さんみたいに、その子供たちと会話をしている。

 私も母になって、書き留めたくなった娘の言葉はたくさんある。本書は、まずはそんな大人たちのためにある本だ。子供が小さい頃のあの記憶や、ひょっとしたら自身の母への思慕をまざまざと蘇(よみがえ)らせるものとして。

 ◇本紙家庭面の「こどもの詩」の50周年を機に約200編を収録した。4人の歴代選者は日本を代表する詩人。

 中央公論新社 1400円

読売新聞
2017年4月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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