音楽隊を舞台にした、平和への祈り――『薫風のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート3』刊行エッセイ 福田和代

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薫風のカノン

『薫風のカノン』

著者
福田和代 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334911591
発売日
2017/04/17
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

音楽隊を舞台にした、平和への祈り――『薫風のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート3』刊行エッセイ 福田和代

[レビュアー] 福田和代

待たせしました! 『碧空のカノン』『群青のカノン』に続く、「航空自衛隊航空中央音楽隊ノート」シリーズ第三弾『薫風のカノン』、登場であります。

 自衛隊と吹奏楽と日常系ミステリの組み合わせは、思った以上に相性がいいようです。するすると筆が進んで、音楽隊を舞台にした、ちょっぴりドジっ娘の鳴瀬佳音三等空曹と渡会三等空曹の、もどかしいラブコメディもついに大詰め、これにていったん締めくくりとなります。

 三巻に登場するのは、佳音と渡会のほか、狩野夫人、同期の吉川美樹、真弓クンたちおなじみの面々です。大丈夫ですよ、殺人事件は起きません。テロリストや爆弾魔もたぶん、出てきません。あれ、出てこないよね? スリルとサスペンスは、すこーしあるかもしれません(本当か?)。

 渡会の恋心に気がつきそうで気がつかない、じれったい鳴瀬佳音の恋愛に、はたして決着はつくのでしょうか。佳音に興味を示す後輩、松尾光のその後はいかに――。

 近ごろ自衛隊といえば、国連PKOや北朝鮮のミサイル発射、たび重なる自衛隊機のスクランブルなど、新聞紙面でニュースに登場しない日がありません。しかし、楽器を抱えて全国を行脚する音楽隊のこともぜひ、忘れないでくださいね。芸術や文化のレベルは、わたしたちの成熟度をはかるものさしです。しかも、自衛隊という、わが国の安全を守る組織が、優秀な音楽隊を抱えているなんて、なんとまあ、誇らしいじゃないですか。これこそまさに豊かさの象徴じゃないかな、とひそかに考えています。

 学習指導要領の武道の選択科目に「銃剣道」が追加されたり、教育勅語を称える大臣が登場したりする現代だからこそ、このシリーズは自衛隊を舞台にした、平和への祈りの物語として書きました。どうぞ佳音たちの平穏な生活が、いつまでも続きますように。一緒に祈ってやってくださいよ。

光文社 小説宝石
2017年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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