『再発見 日本の哲学 北一輝――国家と進化』
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国家論の「転回」と「信」の思想的核心
[レビュアー] 図書新聞
国家のあり方が問われる危機の時代に、必ず立ち返られる思想家がいる。北一輝もその一人だ。本書は北の思想を内在的に読み解き、近代日本思想史の中に位置づける。その特徴は、北の国家主義が、中国革命の経験をはさんで、議会による社会主義革命から、暴力革命による国家改造へと大きく「転回」した意味を解明した点にある。これまでは北の社会主義から国家社会主義への転向を見る評価が根強かったが、著者はそこに断絶ではなく、内在的な連続の必然性を見る。「国家人格実在論」といわれる有機体としての国家論の進化で、北は社会主義と資本主義が総合する国家社会主義に基づく国家論を提示した。核心には北が日蓮の法華経信仰から導いた「信」と、北自身の神話があったと著者は説く。(2・10刊、三六〇頁・本体一一〇〇円・講談社学術文庫)