おそらく日本初の職業シリーズです『サイレント・マイノリティ 難民調査官』刊行エッセイ 下村敦史
エッセイ
『サイレント・マイノリティ 難民調査官』
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おそらく日本初の職業シリーズです『サイレント・マイノリティ 難民調査官』刊行エッセイ 下村敦史
[レビュアー] 下村敦史(小説家・推理作家)
僕が難民問題に関心を持ったのは、まだ難民に注目が薄かった二〇一二年頃です。“難民調査官”という実在の職業を知り、誰よりも先に扱いたいと思いました。願いが叶ったのは、デビューから一年半後です。
クールで、不器用で、でも、自分の主義主張には毅然と筋を通すヒロイン――難民調査官の如月玲奈と、難民寄りの考え方を持ち、玲奈と時に対立しながらも補佐している難民調査官補の高杉純。男女のコンビが難民申請者の謎や、組織の陰謀に直面し、葛藤しながらも真実を追っていく特殊職業のサスペンス・シリーズです。
去年はクルド人難民を扱った第一弾『難民調査官』を上梓しました。発売後の打ち上げの席で早くも次回作の話になり、編集長から「『難民調査官』の続編はどうですか」と。アイデアは用意していましたから、僕は即答してその場で構想を話し、第二弾『サイレント・マイノリティ 難民調査官』が実現したのでした。
今回はタイムリーなシリア人難民を扱っています。前作は各方面に配慮してミステリー性を抑えた結果、ドキュメンタリー的なサスペンスになりました。難民問題等に関わる弁護士の方や行政書士の方からはずいぶん好評の声をいただきましたが、ミステリーファンには少し物足りなかった様子。反省して今作はミステリー性とどんでん返しを最優先しました。
江戸川乱歩賞受賞作の『闇に香る嘘』(講談社)や日本推理作家協会賞候補の『生還者』(同)のように、僕は“嘘”を謎の核に持ってきたミステリーが好評で、成功しています。『サイレント・マイノリティ 難民調査官』もそんな“嘘”が核のミステリーです。
母国シリアでの迫害を理由に難民認定を求める父に対し、娘は迫害を否定して不認定を求めます。食い違う両者の言い分。嘘をついているのはどちらか。なぜそんな証言をするのか――。主人公コンビと共に真相を追いかけてください!