『仕事の問題地図』
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リアルな共感を得て人事労務系本の大ヒット
[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)
昨年の9月に発売された『職場の問題地図』(沢渡あまね、技術評論社)が12刷りとロングセラーになっている。そして先月、『仕事の問題地図』が発売されて早くも増刷、両書あわせて累計で11万部を突破した。人事労務系の本でここまでヒットしたものはあまり記憶にない。
定時で帰っているのは一部の部署だけ。皆、相変わらず夜遅くまで残業している。「残業するな」と上司がうるさいので、帰ったことにして家で仕事している。定時退社日以外の日の残業が増えた。このようなワークライフバランスごっこをしている企業が世の中には多いのだろう。そういった企業で働いている人の多くが、2冊ともに共感を抱いているに違いない。
問題地図というだけあって、この本には図やグラフがとても多い。それらがみな手書きのイラストで描かれているのが本書の特徴で、それによりとても親しみやすさを覚える。また文章に書かれていることが図によって可視化されているので、内容がすんなりと腑に落ちるのだ。それがこの本のウケている要因のひとつだろう。
問題のある職場といって最初に思い浮かぶのは、残業だらけで休めないような職場だ。残業が多くなってしまう原因のひとつは「手戻り」が多いことだ。コミュニケーション不足により、部下の仕事が上司のイメージと異なり、一からやり直しになってしまった。このような無駄をなくすためには、はじめから100点をとろうとしないことが大事だ。適切なタイミングで報連相をすることで、相手の要望をきちんとくみ取り、30点ずつを着実に積み上げていく。その積み重ねで100点に近づける。そういったアプローチが必要だ。また報連相の仕方や受け取り方に問題があるという場合もある。それもあらかじめルールを決めることで解決できる。どういったルールを設けたらいいのかは、ぜひ本書を読んで確認してほしい。
年度が変わり、人事異動などで職場の環境が変わったという人も多いと思う。そんな時期こそ、問題のある職場や仕事を改善するチャンスだ。ぜひこの本を読んで、健全な職場に変えてほしい。